639 デス・ファイト
世界最高の魔法使いは誰かと聞かれれば、誰もが大魔女エントラ様と答えるだろう。
それほど彼女の魔法は絶対的なものだ。
だが、古代文明によって作られた黄金巨神ダルダロスはそんな彼女の全力の魔法の直撃を受けながら全くの無傷だった。
魔法を全く受け付けない金属、アレは間違いなくオリハルコンで作られている。
だがそれだけではない。
黄金巨神と呼ばれるだけに、ダルダロスは古代金属オリハルコンをさらに金色の魔法耐性効果が付与されていると考えた方がいいだろう。
世界最高の硬度を持つ金属にさらに古代の技術で付与された魔法耐性、これはどんな攻撃も一切受け付けないといえるだろう。
どうしたらいいのだろうか。
ボク達はゴルガの手に落ちた黄金巨神ダルダロスと戦わなくてはいけない。
大魔女エントラ様の魔力でボク達はコイツを誰もいない場所に連れ出すことには成功した。
だが、全身を魔力防御と最高硬度のオリハルコンで作られた最強最大の黄金巨神を倒す方法は誰も思いつかないようだ。
「くっ、とりあえずはあの大量の光の矢を受け止めるだけで精いっぱいだねェ!」
「ワシも長くは持たんぞ。この巨体を抑えるだけでワシの力の大半を使い果たすわい」
今ここにいる最強の二人は間違いなく大魔女エントラ様とアンさんだ。
ホームさん、ルームさん、それにフロアさんとサラサさんはSSクラスのモンスターと戦うことは出来ても、黄金巨神ダルダロスの前には何の手出しもできない。
いや、下手に戦えば返り討ちにあうので今は動かない方が正解かもしれないくらいだ。
一体どうやってあのバケモノと戦えばいいのだろうか……。
ボクはこの中で唯一あの怪物と戦う方法を思いつきそうなソウイチロウさんに尋ねてみることにした。
『ソウイチロウさん、とてもじゃないですけど……ここにいる誰もがあの怪物に勝てるとはとても思えないみたいです。アナタなら、何かアイツを倒す方法を思いつかないでしょうか?』
『そうだな、三つくらい方法は考えられるが、どれも一筋縄では行かない方法だぞ。それに賭けみたいなものなので、失敗すれば負け、全滅するかもしれない』
やはりこの人はこの状況下でもあの怪物を倒す方法を思いついていた!
だが、危険な賭けと言われれば、ボクの判断だけでみんなを戦わせるわけにはいかない。
『その方法、教えてもらえますか?』
『わかった。アイツを倒すのはアイツ自身の攻撃だけだ。矛盾と言ってな、昔最強の矛と最強の盾を売っていたという商人が、客にその二つをぶつけたらどうなる? と聞かれた話があった。つまり、最強のオリハルコンを破壊できるのは、最強の破壊力を持った黄金巨神の攻撃だけだということだ』
なるほど、そういうことだったのか。
つまり、ソウイチロウさんは黄金巨神ダルダロスを倒す方法はアイツの武器をアイツにぶつけさせることだと言っている。
そう言えばこれはボクが共有しているソウイチロウさんの記憶で一度やったことがあった!
遺跡の魔神、ガーゼットを倒す時に鏡を使ってアイツの目からの光線を跳ね返させて腕を焼き切ったのがまさにこの攻撃方法だった。
なるほど、今なら大魔女エントラ様もいるのでもっと楽に敵の攻撃を誘導させる方法もある。
これをみんなに伝えればどうにかあの黄金巨神ダルダロスに勝てそうだ。
『わかりました、ソウイチロウさん。ボクがみんなに伝えてみます!』
『頼んだぞ、ユカ』
ボクはソウイチロウさんとの話を大魔女エントラ様に伝えることにした。
「エントラ様、敵の光の矢を操ることは出来ますか?」
「あ、まぁ可能だねェ。その間バリアフィールドの魔法は使えなくなるけど」
「それなら私が引き受けますわ!」
ルームさんがバリアフィールドの魔法を引き受けると言ってくれた。
「そう、それだったら確かに魔力誘導に専念できるねェ」
これでどうにかあの黄金巨神に反撃する方法が見つかった。




