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637 超転移魔法デスドライブ

 ボク達の目の前に見えるのは、とてつもなく巨大な黄金の巨神だった。

 それは、水晶超しで見たバロールと戦っていた黄金の巨神で間違いない。


 なぜなら、この巨神の放った幾千の光の矢は、一瞬で町どころか地形すら変えかねないほどの威力だったからだ。

 そんな攻撃が出来る黄金の巨神がそう何体もいるわけがない!


 つまり、この黄金の巨神は……ゴルガの手に落ち、ゴルガの武器に作り替えられてしまったのだろう。

 このままこの巨神を放っておけば、高い闇から地上に降りたこいつによって世界がメチャクチャにされてしまう!


 それだけは絶対に避けないと。


「エントラ様、話が途中で止まってしまいました」

「どうやらそうみたいだねェ。しかし……この怪物、(わらわ)の魔法障壁をボロボロにするとは、敵ながらやるねェ」

「おい、えんとら。そのような呑気なことを言っておる場合ではないぞ。あやつを倒さねばワシら全滅じゃ」

「お師匠様、(わたくし)も戦いますわ。アレをお父様達のいる地上に降ろすわけにはいきませんわ」

「ユカさん、俺達も戦います。あの怪物を地上に降ろしてしまうと世界がメチャクチャにされてしまいます」


 ここにいるみんなは逃げるという選択肢は無いようだ。

 全員が勝てる見込みは無くてもあの黄金の巨神と戦おうと考えている。


 それは、自分のためというよりも、守りたい人たちがいるから。

 あの黄金の巨神はこのまま地上に降りてしまうと破壊神として世界をメチャクチャにしてしまう。

 それを倒せるのは世界でもボク達だけしかいない。


 ボクは先程の話の続きを大魔女エントラ様に聞いてみることにした。


「それで、エントラ様。どうやってアイツを倒すというのですか?」

「そうねェ。まずはここから移動しようかねェ」

「ここから? でもこの高い闇からどこに行くんですか!?」

「まあそれは(わらわ)に任せればいいからねェ! ユカはマップチェンジスキルを使えるようにだけ準備しておくんだねェ」


 どうやら大魔女エントラ様は既に何か方法を考えていたようだ。


「さて、この一帯全てを異空間に移動させようかねェ! 超転移魔法……デスドライブッ!」


 なんと、大魔女エントラ様は黄金の巨神ごとボク達全員を彼女の作り出した異空間に転移させようとしている。

 だがその魔法は絶対的な魔力を持つ彼女ですら、脂汗を出すほどに過酷なものだったようだ。


「くッ! アポカリプス一族の力でもこの一帯全てを転移させるとなると……かなりキツい物があるねェ‼」


 人一人を転移させるだけならワープ床みたいなものだと確かに魔力は少し使うが、この一帯全てを別空間に移動させるとなると、それは既に神にも等しい魔力が必要になる。


「お師匠様、私の魔力も使ってくださいませ!」

「ルームちゃん、ありがとうねェ。コレで少し楽になったかもねェ」


 再び魔力を集中させた大魔女エントラ様の作った異空間の門、それは伝説の黄金巨神すらもその中に吸い込むほどの威力だった。


「やった、でも異空間にそのまま置いておくわけにはいかないからねェ。妾達も移動するよ」


 異空間の門はその直後、ボク達全員を呑み込み、その場から消滅した。


◆◆◆


「大変です、総司令! 黄金巨神ダルダロスが消失しました!」

「何だと⁉ バカな。そんな……あり得ない」

「まさか、あれは伝説の魔法、デス……ドライブ」

「何だ、そのデスドライブとは!?」


 浮遊要塞アルカディアでは、対ゴルガのために封印を解いた黄金巨神ダルダロスが消失したことを誰もが驚いていた。

 その中でデスドライブについて知っている者が発した言葉は周囲を驚愕させた。


「デスドライブとは、異空間を繋げてしまう魔法です。その異空間に送られたものはその後どうなるかは誰も知りません。何故なら送られた異空間から戻ってきたものは誰一人としていないからです!」

「何だと……神は我らを見捨てたというのか」


 黄金巨神ダルダロスを消失してしまった浮遊要塞アルカディアの住人達は、深い絶望の中に沈み込んでいた。

今年もお世話になりました。来年もよろしくお願い致します。


今ピッコマ大賞応募用の悪役令嬢の話を書いていますが、来年はロボット物の作品も作りたいと思っていますのでそちらもよろしくお願い致します。

双子の話はピッコマ大賞が終わり次第再開予定です。

もう一つの話は、大きく修正するかもしれません……。

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