634 封印された超兵器
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強烈な光の矢の一撃を躱したボク達だったが、脅威はまだ終わっていなかった。
「何か遠くの方から大量に迫ってくるものがいるみたいだねェ!」
「そうじゃのう、雲霞の如く迫ってきておるのう。それもかなりの数じゃ」
大魔女エントラ様、それにアンさんはボク達のピンチがあの光の矢の一撃だけでないことをわかっているようだ。
「まあ数がいくらいようと、妾の敵ではないけどねェ!」
「そうじゃのう。いくら高い闇といえど、ワシらの力が全く使えなくなっておるわけではないからのう!」
最強レベルの二人が魔力を集めだした。
魔力とは高熱源のエネルギーの塊のようなもの。
いくら空気の無い高い闇の中といえど、ここはエネルギーが無い場所ではないようだ。
むしろ、大魔女エントラ様に至っては普段以上に少ない魔力でエネルギーを集めることが出来ているようだ。
「ここならコメットフォールが撃ち放題だねェ!」
そう言うと彼女は指先でいくつもの小さな岩石を操り、迫りくる敵の群れに向けて放った。
「さて、一気に殲滅と行こうかねェッ!」
大魔女エントラ様によるコメットフォールは遠方から迫る敵の群れを次々と砕いた。
ボク達が少し近づいてきた敵が目視出来たのでその敵を確認すると、敵は金属の鎧や何かの鳥のような形の金属の塊だった。
「これは、ひょっとしてゴルガの兵器!?」
なんということだ。
ボク達は忘れ去られし者達の集落を目指していたはずだったのに、何故かゴルガの敵の軍団と遭遇してしまったようだ。
「困ったことになったねェ。まあ敵が出てきたからには、全滅させるだけだけどねェ」
そう言った大魔女エントラ様は次々と小型の岩を敵の機械で出来た怪物たち目掛けて放っていった。
◆◆◆
「ダメです! 第三防衛隊壊滅です! 守衛ゴーレム部隊第二陣、発射させますか!」
「敵がまさかこれほどの戦力だとは……ゴルガの人造魔法兵が復活したというのかっ‼」
浮遊要塞アルカディアの防衛を担ってきた防衛軍司令部は突如の脅威に対し、対策チームを立ち上げた。
「このままあの生物兵器の乗った隕石をこの浮遊要塞アルカディアに近づけさせると、数万数十万の人類や生物達の生命が脅かされてしまいます!」
「仕方ない……こうなれば総帥の指示を待とう……下手すれば、アレの封印を解く必要があるかもしれないからな」
「まさか!? ですがもしあの封印を解くとなると、この浮遊要塞アルカディアも無事では済まなくなります!」
「仕方ない、被害を最小限に済ますためには、多少のダメージは覚悟の上だ。すぐにでも浮遊要塞アルカディアのメインエンジンを起動できるようにしておいてくれ」
命令を受けた兵士は、浮遊要塞アルカディアのメインエンジンを起動させるために特殊ブロック目掛けて走った。
そこにあったのは、長い間開かれることの無かった扉。
その扉の中に入った兵士は、起動プログラムを立ち上げ、浮遊要塞アルカディアの動力源をメインエンジンにバイパス接続した。
メインエンジンに火の入った浮遊要塞アルカディアは激しい振動を起こしながら移動を開始した。
『住民の皆様にご報告です。浮遊都市アルカディアはこれより超航行距離移動可能な巡航モードに変化します。危険ですので建物の中に入り、しばらくの間は表に出ないようにしてください。繰り返します……浮遊都市アルカディアはこれより超航行距離移動可能な巡航モードに変化します。危険ですので建物の中に入り、しばらくの間は表に出ないようにしてください』
浮遊要塞アルカディアは長年の沈黙を破り、移動可能な航行モードに変化した。
それは、封印を解かれた超兵器の被弾を避けるためのものである。
だが、この後のユカ達と封印を解かれた超兵器の恐るべき戦いを知る者はまだ誰一人としていなかった……。




