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633 誤解が誤解を呼ぶ対決

◆◇◆


 ボク達は高速で動く岩に乗って、高い闇の中を移動していた。

 大魔女エントラ様の魔力による結界のおかげで当たる隕石の方が粉々になるのは良いのだが、もしこの速さで忘れ去られし者達の集落にぶち当たったらシャレにならない。


 その場合下手すればボク達よりも集落の人達に損害や被害が出る可能性が高く、ボク達が加害者側になりかねない。

 そんな状況になったらせっかくのターナさんの話からのゴルガに関する話やダルダロスに関する話が何も聞けなくなってしまう。


 どうしてもそういう最悪の事態だけは避けなくていけない!

 ボクはそう思っていたのだが、この時すでに状況は最悪の方向に向かっていた。


「ぬう! えんとら、何やら前方から強烈な熱源が迫ってきよるぞ!」

「何だってェ!? みんな、ちょっとビックリするかもしれないけど、少し向きを変えるからねェ」


 そう言うと大魔女エントラ様は杖を掲げ、岩の飛ぶ向きを変更した。

 その直後……巨大な光の矢がボク達のいた辺りに凄まじい速さと熱量を持ったまま通り過ぎていった。


「ふう、危機一髪だったねェ。イオリ、よく気が付いたねェ」

「うむ、ワシの千里眼を使っておったからすぐに気が付いたわい」


 やはりこの人達はとんでもないハイレベルだ。

 あの熱量と速さの光の矢をとっさの判断で躱すことが出来たのだから。


 ボク達をかすめていった光の矢は、そのままボク達の向かってきた金属で出来た島の巨大鏡を吹き飛ばしていた。

 もし、あんなものが直撃していたら……ボクはそう考えてしまい、驚愕していた。


「あの光の矢。下手すればウルティマ・ザインが放ったものかもしれないねェ!」

「もしそうだとしたら、この高い闇の中には凶悪な怪物がそのまま存在するってことですか!?」


 まあ古代の魔神が生き物でないゴーレムの一種だとするなら、この高い闇の中に存在しても何もおかしくはない。

 もしそうだとしたらその脅威から逃げる方法は無い。

 逃げるくらいなら倒すしか無いのだ。


「仕方ないねェ。あまりここで派手な魔法は使いたくないんだけどねェ。下手すれば魔法の欠片が流星になって降り注ぐかもしれないからねェ」


 流星の魔女と言われている大魔女エントラ様が言うくらいだ。

 本当にそうなる可能性は十分に考えられる。


 だが今ここでウルティマ・ザインがいるとすれば、それは空帝戦艦アルビオン以上の脅威が地上に降り注ぐことになる。

 それだけは絶対に避けないと!


「みんな、厳しい戦いになるかもしれない。でもウルティマ・ザインを倒すためには今ボク達の全力で戦うしかないんだ!」

「わかりました! 僕も戦います!」


 今は魂の救済者(ソウルセイバー)を持たないホームさんだったが、どうやってあの怪物と戦おうと言うのだろうか。

 それでもボク達以外にあの驚異の怪物を倒せる人達はいないんだ。


「みんな、覚悟は決まったみたいだねェ。それじゃあ熱源の放たれた方に向かうからねェ」


 大魔女エントラ様は杖を掲げ、目標を熱源の放たれた南西の方に向けた。


◆◆◆


 ユカ達と遠く離れた場所にある浮遊要塞アルカディアでは迫りくる脅威に対し、厳戒態勢が取られていた。


「大変です! 彗星らしき兵器、いきなり軌道を変更してソルブラスターを回避しました。これは間違いなく自然の物にはあり得ない動きです!」

「やはりゴルガの負の遺産か……仕方ない、ゴーレム部隊を発進させ、彗星を物理的に破壊せよ。このアルカディアに住む一般人を戦渦に巻き込むわけにはいかん!」


 浮遊要塞アルカディアの司令官は、迫りくる脅威に対し、臨戦態勢に入った。


 ユカ達と浮遊要塞アルカディアの誤解が誤解を呼ぶ対決は、もはや避けられないものとなってしまっている。

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