62 アフロのフロア
マイルさんの植物使いのスキルで作った蔓で吊られた魔獣使いの男を捕らえた。男の見た目は細身の長身で頭は笑えるくらいもっさりしたアフロヘアだった。
「ふざけんなー! ここから降ろせー!! このバケモン!!!」
バケモンとは心外である。確かにこのスキルはかなりの特殊スキルで初見だと間違いなくバケモン扱いされかねない物ではある。しかしいきなり言うのはやめてほしい。
「マンティコアでボク達を倒せなかったから猿をけしかけたのか! 魔獣使い!!」
「はぁ? お前らこそマンティコア倒したんじゃないのか?」
??? 何故かお互い言っている事が支離滅裂である。コイツは本当にマンティコアを使っていた魔獣使いではないのか? そしてコイツは私達がマンティコアを倒したと言っている、まあそれは事実なのだが。
「あーーー! こいつが私達を覗いていた犯人です! 私は魔力感知でこいつの魔力を感じました。 あの時は気が付かなかったですが」
「ババババカ!! 誰がそんな貧相な体を覗くか! このお子様体型!」
こいつはバカだ、黙っていれば覗いていた事まではバレなかったのに、自ら墓穴を掘ってこの超危険魔導士の事を怒らせてしまった。
「乙女の柔肌を覗くなんて変態……万死に値しますわ! 食らいなさい、サンダー……ボル」
「ルーム! やめるんだ!!」
この騒ぎの後ろから服を着替え、鎧をまとったホームが追いかけてきた。
「ルーム、馬鹿な真似はやめるんだ!」
「お兄様ー! コイツ私の裸を覗いたのですよ、こんな乙女の敵……万死に値しますわ!」
「ルーム、この国、特に父上の治めるこの地域は法治国家だという事を忘れたか!?」
「う、そういえばそうでしたわ……」
「犯罪者は捕らえた上でしかるべき処置をする、その為には生きた上で捕らえて裁きを下すのがボク達のなすべき事、それを無視して勝手に処刑するのは父上の治める法治国家に泥を塗る事になるんだ!」
ホームは若いながらも正しい判断が出来ているようだ。あまりにも杓子定規で臨機応変に欠けるのかもしれないが、ここはホームの言う事の方が正しいだろう。
「それに……こういう犯罪者を捕らえた上で罰を下すのは僕達になるだろう。その時に今の鬱憤を思う存分晴らした方がルームも気持ちいいのじゃないのか?」
やはり……伯爵の息子である。ただ優しい、法を守るだけはない。罪を憎んで人を憎まずだが……犯罪者には苛烈なのも父親譲りと言えるであろう。
「助けてくれー……俺様が悪かった。だからここから降ろしてー」
「お前は反省して罰を受けるんだな?」
「わかったよ。わかったから少しだけでいいからこの蔓を緩めてくれー」
反省しているかどうか判断が付かない態度である。ここはマイルさんにも聞いてみるか。
「マイルさん、こいつの縛りを少し緩めてもいいかな?」
「まあ少しならねぇー。どうせ動けないんだしぃ……いいよぉ」
そしてマイルさんは吊られ男の縛られた蔓を少しだけ緩めた。その時!
「ピィーーーー!」
男は自由になった手を口に持って行き、口笛を吹いた。それを聞いて巨大な鳥が上空から降りてきた!
クェエエエエ!!
大型のダイブイーグルだ! ダイブイーグルはそのくちばしで吊られ男の蔓を切り裂き、男を鷲掴みにすると空に飛びあがった!!
「あーばよ! 俺様は捕まらないぜー!」
魔獣使いは猿だけではなく鳥までも自由に使役できたのだ! 私達はまんまと魔獣使いの男に逃げられてしまった。
「皆さん、一体どうなされましたか!?」
「オンスさん、話は後です。女性用の服を三人分直ぐに持ってきて下さい!」
「わかりました!!」
◆
「恐らくそいつは動物使いのフロアですね」
「あのアフロ頭、そんな名前だったのか!」
「あのー……ユカ様? アフロって何でございますか?」
「えーと。古代の言葉で、もじゃもじゃの丸い頭の事だよ」
「……?……本当?」
エリアが古代の言葉と聞いて聞き覚えの無い言葉に首をかしげていた。
「それで、アイツは一体何者なんですか!?」