631 中には一体何が?
最強の古代金属オリハルコンで出来た剣ですら傷一つつけられない壁や扉。
この中には何が存在するのだろうか?
「ダメだ、傷一つ付かない」
「どうやらこれはオリハルコンをさらに斬撃、打撃といった物理無効の魔法で覆っているみたいだから、どんな方法でも壊せそうになさそうだねェ」
世界の大半を知り尽くしている大魔女エントラ様ですらこの中には入れないと言っている。
これは正攻法で扉を開ける方法を調べるしかなさそうだ。
「しかしここまでして壁や扉を壊せないようにしているって、中に何があるのかねェ」
大魔女エントラ様がそう言った直後、エリアさんが頭を抱えてうずくまってしまった。
「ダメです……この扉を開いては……この中には恐るべきものが……います!」
エリアさんのこの怯えよう、コレはただ事では済まなそうだ。
「エリアさん、一体この中に何があるんですか?」
「わかりません……しかし、この壁の中に何かがいます。それはとてつもなく恐ろしい力を持った巨大な何か……」
ひょっとして、この中にいるのはゴルガ文明の破壊神だというのか?
だとすると、ゴルガ軍国とはこの高い闇すらも支配していたというのか……。
「むうう、確かにこの中から尋常ならざる力を感じるわい。この扉は開かぬ方がよいじゃろうな」
最強のドラゴンの神であるアンさんもこの中に入るのは避けた方がいいと言っている。
やはりこの中には何か恐ろしい怪物がいるのだろう。
「ユカ、少し恐ろしい話をさせてもらうねェ。この壁と扉だけどねェ、これだけ傷つけることが出来ないほどの硬さに更に魔法で強化している理由が、外からの侵入を拒むものでないとしたら、何が理由だと思うかねェ」
「外から入らせないための壁や扉出ないとすると……ひょっとして!」
「そう、この遺跡がむしろ破壊神を中から逃がさないためのものって可能性も考えられるってことだねェ」
確かに、考えるとその可能性は十分に考えられる。
これだけの硬さの壁と扉、それが凶悪な怪物を閉じ込めるものだとすると、この中に入れないのも納得だ。
しかし、何故食料を作っていた場所にそんな凶悪な怪物を閉じ込める場所を用意したのだろうか?
ボクがそれを疑問に思っていると、ソウイチロウさんが答えてくれた。
『ユカ、これだけ巨大な宇宙の島、つまりスペースコロニーやステーションがそう簡単に作れると思うか? そういう点から考えると、ここは元々食料を作るための場所だったが、その機能を廃棄してまで凶悪な怪物を閉じ込めるだけの場所が必要だったといえるだろう。つまりこれだけの大きな島はそう簡単に作れないから、あったものをそのまま流用したと考えればわかるかな』
確かに、それなら納得だ。
これだけ巨大な島をいくら古代の文明だと言ってもそんなに何個も何個も作れるわけがない。
その島の一つを使ってまで凶悪な怪物を閉じ込める。
そこまでしないと古代文明の破壊神を封印することが出来なかったということなのか。
「みんな、食料も確保できたし一旦ここから離れよう」
「そうだねェ。ここにいてもこれ以上見つかるものもなさそうだしねェ」
ボク達はどうにか島の入り口まで壁面の地図を頼りにして戻り、入口から外に出た。
「さて、それじゃあまた移動かねェ。イオリ、アンタこの辺りに何があるか見えるかねェ」
「そうじゃな、ここより西南といった場所に何かここと同じような大きな島らしきものが見えるのう」
「決まりだねェ、それじゃあそっちへ向かうよ」
ボク達は再び防御魔法の結界の張られた岩でアンさんが見つけた何かのある方向に出発した。
今度こそ忘れ去られし者達の集落につけるのだろうか?




