628 緑の廃墟
永く開かれていなかった扉を開いたボク達が中で見たものは、一面緑に覆い尽くされた廃墟だった。
「なんだここは?」
「どうやらかなり長い間誰も人がいた形跡が見えないねェ」
「どうやらここには空気があるようです。エントラ様、もう結界魔法を解いても大丈夫かと」
そう言ってソウイチロウさんは扉を閉めた。
ここの扉が閉まっている限りはここから空気が漏れ出すことは無さそうだ。
「ン……なんじゃ、もう朝か? 随分とまぶしいのう」
空中にぷかぷか浮いたままだったアンさんが目を覚ました。
「あーよく寝たわい。ところでここは何処じゃ?」
「おはようございます、イオリ様。ここは……何処かわかりませんわ」
空中でアンさんがずっこけた。
「ここは……まで言えば何か知っておると思うじゃろうが、たわけ」
アンさんが笑いながらルームさんにツッコミを入れた。
「まあここが何か知ってる人なんて、それこそユカが何かわかるくらいじゃないかねェ」
「え? ボクですか??」
大魔女エントラ様が言っているのはボクのことではなく、間違いなくソウイチロウさんのことだろう。
確かにこういう場合は彼が一番知っているとボクも思う。
『うーん、ここが何かといわれると私も憶測でしかものが言えないからな。まあこの緑に覆われた廃墟が元々人の住んでいた場所ということくらいは分かるけどな』
どうやら彼もここがこれだとは確定では言えないらしい。
やはりこの中を調べてみるしかなさそうだ。
ボク達が見る限り、ここで見えるものは天を突くほど巨大な鏡と透明な水晶のようなもので出来た巨大な壁、そして反対側の内側を覆う巨大な金属性の壁だけだ。
それ以外はほぼ植物に覆い尽くされたジャングルみたいになっていて、何が何だかわからない。
「ここでは下手に魔法を使わない方がいいねェ。もし火の魔法なんて使ったら一瞬で燃え広がってしまうからねェ」
確かにこれだけ燃えやすい植物が大量にある場所で火がついてしまえば、火が引火してどこまでも巨大な山火事みたいな状態になる。そうなってしまうとアンさんや大魔女エントラ様の魔法でも火が消せるかどうかわからない。
「わかりました。気をつけます」
ボク達はこの緑の廃墟に何かが無いかを調べることにした。
どうやら全く生き物がいないわけではなさそうだ、辺りから何かの鳴き声が聞こえる。
「フロア、何かいる。我にまかせろ」
「サラサ?」
サラサさんが何かの動物の気配を感じたらしい。
彼女は弓で遠くにいた生き物を仕留めた。
「ピギェッ!」
彼女の放った矢は一撃で獲物を倒した。
それは、牛とも豚ともつかない何とも不思議な生き物だった。
「そうねェ。とりあえず魔法で鑑定してみたところ毒は無さそうだねぇ」
お昼を過ぎても食事の出来ていなかったボク達はこの謎の生き物を解体して食事をすることにした。
それは辺りの植物に火が燃え移らないように結界魔法を使った上でだった。
「コレ、美味しいですわ! 何というか牛とも豚ともつかないですけど」
「おーい、向こうには魚がいたぞ。これも焼いて食べれないか」
「まあ魚は生で食べるのはよした方が良さそうですね。これも焼きましょう」
ボク達は無事食事を済ませて少し休むことにした。
どうやらここにはモンスターは存在しないようなので、安心して休める。
「ユカさん。折角ですからここで少し食料を調達しておいた方が良くないですか?」
「そうだね。確かにここなら安心して食料調達できそうだ」
ボク達は少しの間ここで食料を確保するために何があるのかを調べることにした。
幸いここは食べ物になりそうなものが結構色々とありそうだ。
『ユカ。多分だけどここが何か私には想像がついたぞ。ここは廃棄された食料製造用プラントだと思う』
『ソウイチロウさん、それって本当ですか!』
ここが本当に食料調達のための場所なら今のボク達にはとても助かる、ボクはそう思った。




