627 人のいない遺跡
ボク達は金属で出来た巨大な島の入り口で人を呼んだ。
もし言葉が通じなかったとしても、何か音が聞こえたなら誰か出てくるだろう。
そう思ったが、中からは何の反応も無かった。
「誰もいないんだろうか?」
「その可能性も十分考えられるねェ。どうにか中に入る方法を自分達で考えた方が良さそうかもねェ」
確かにこの入り口、長い間開いた形跡が見えない。
本当に中には誰もいないのだろうか?
ボク達は扉の周りを調べてみることにした。
ここでもし下手に地面をマップチェンジスキルで穴をあけるとそこから空気が漏れて中に誰かいたら死んでしまうかもしれない。
そう考えると今回は下手にスキルが使えない。
どうにか中に入る方法は無いだろうか?
みんなが何か無いか探していたが、フロアさんとサラサさんが何かを見つけたようだった。
「ユカさん、何かありました。あの空飛ぶ船のあったフワフワ族の空の島のものに似ていませんか?」
フロアさんが見つけたのは、蔦に絡まっている水晶の板のようなものだった。
確かにこれはあのフワフワ族の集落の所にあった空の浮島の入り口と似ている。
『ユカ、どうやらこれはパネルコンソールみたいだな。電源が入っていないみたいなので機械としては使えていないみたいだ』
『ソウイチロウさん、これも魔力か雷があれば動くものなのですか?』
『その可能性は十分にあるな。電源が入れば入口のコンソールとしては動くだろう』
ボクはソウイチロウさんに聞いたことを大魔女エントラ様に伝えた。
「エントラ様、どうやらこの水晶の板の所に何かの魔法を使うとこの機械が動くかもしれないです」
「そうだねェ。それじゃあ一度やってみるかねェ」
そう言うと彼女は指を水晶板の上に置いて、小さく雷の魔法を指先から出した。
PIPIPIPIPI!
「ステーションカンリシステム……サイキドウ。カンリシャケンゲン、キンキュウジタイヨウセイニツキロックカイジョ」
大魔女エントラ様が雷の魔力を使うと、水晶板が光り出し、どこからか謎の言葉を発した。
『やはりこれがゲートの開閉システムだったみたいだな。だが、これを見る限りだと、かなり長い間使われていなかったようだ。どうやらここは忘れ去られし者達の集落ではなさそうだな』
『ソウイチロウさん、この中入って大丈夫なんですか?』
『まあ問題無いだろう。なぜならその機械にツタが絡まっているということは、この中は植物があるので空気はあるということだろう』
この高い闇の中で一番この場所の知識があるのは間違いなくソウイチロウさんで間違いない。
その彼がこの中は入っても問題ないと言っているのだ。
「エントラ様、この中に入る方法は分かりますか?」
「うーん、これはどうも妾も見たこと無い機械だねェ。むしろユカの方がまだわかるんじゃないかねェ」
これは間違いなく彼女がソウイチロウさんにやらせた方が確実だと言ってるのだろう。
p
『ソウイチロウさん、あなたならこの中に入ることが出来ますか?』
「まあ出来るとは言い切れないが、この中でこれが何かわかるのは私だけだろうな。わかった、ユカ、少し身体を借りるぞ」
そう言って彼はボクの身体で水晶板を操作し始めた。
「なるほどなるほど、文字はイマイチよくわからないが、これを見る限りオープンシステムは今ロックが解除されているので普通に開閉コンソールを操作すればオープンできるみたいだ」
「ユカ……あなたこの機械……わかるの?」
「ああ、ちょっと待っててくれ。今これを開くから。ここがこうなって、よし、バッチリだっ!」
ソウイチロウさんが水晶板を操作したことで、金属で出来た島に大きな振動が起きた。
「みんな、少し下がってくれ! 危ないぞ」
彼がそう言った直後、扉の上下に光が走り、蔦をブチブチと破りながら扉がゆっくりと開いた。
「やった、これで中に入れるぞ!」
「! 何だこれ……!?」
扉が開いた中をボク達が見ると、そこには辺り一面に広がる植物に覆われたとてつもなく巨大な廃墟が広がっていた。




