626 天を突く巨大な金属島
ボク達は無重力と呼ばれる状態の中でバリアフィールドの魔法が張り巡らされた岩の上にいる。
この岩を大魔女エントラ様が魔法で動かしてくれているおかげで、ボク達は高い闇の中でも無事に移動出来ていた。
「まあ妾のこの魔法ならちょっとやそっとの魔法や衝撃ではダメージを受けないからねェ、安心して中にいれば良いからねェ」
ボク、エリアさん、ホームさんルームさんにフロアさんサラサさん、それに大魔女エントラ様にぷかぷか浮かんだまま寝ているアンさん。それとシートとシーツの双子の狼。
この岩はそれほど大きくはないがそれでも全員が中に入れるだけの広さはあるので、どうにか全員そろって移動出来ている。
しかし本当に大魔女エントラ様の言うようにどんな衝撃でもくい止めることが出来るのだろうか?
ボクがそう思っていた時、この岩の塊目掛けて何かが降ってきた。
「あ、アレは何!?」
「あれは……普段妾が魔法で使うメテオフォールの欠片みたいだねェ。そうなのねェ。妾の魔法のコメットフォールやメテオフォールはこの高い闇から流れ星を呼び寄せていたみたいだねェ」
大魔女エントラ様はサラッと言っているが、メテオフォールなんて究極魔法もいいところ……魔族の大軍でも一瞬で数万を倒せるほどの魔法だ。
そんな隕石がボク達の岩にぶつかったら、一瞬で木っ端みじんだ!
だが大魔女エントラ様は余裕だった。
「妾の魔法結界があの程度の隕石で壊れるわけが無いからねェ」
ドォオオンッ!
「キャアアァアッ‼」
凄い音と衝撃を感じた。
どうやら本当に隕石が大魔女エントラ様のバリアフィールドに当たったようだ。
「ほら、何とも無いねェ」
ボク達は間違いなく大きな音と衝撃を感じた。
だが大魔女エントラ様の張ったバリアフィールドの魔法はそれらを一切通さず、反対にバリアフィールドにぶつかった隕石の方が粉々になっていた。
「凄い……」
「だから言ったんだねェ。気にすることはないって」
本当に気にしていないのか、アンさんはアレだけの衝撃だったにもかかわらず、相変わらず鼻ちょうちんで寝ていた。
「ほら、何か見えてきたねェ。あれが忘れ去られし者達の住処じゃないかねェ?」
「あれは!?」
ボク達が見たものは、天を突くほど巨大な透明のクリスタルの壁で作られた建物らしいものだった。
そしてその建物の下の部分には巨大な鏡がある。
あんな大きな鏡、貴族様の城でも見たことが無い、というより……鏡が海や川と同じくらい巨大だった。
「凄い! あれが本当に建物なのか……」
空を突く巨大な建物、それはまるで巨大な島とも言えるような大きさだった。
そんな機械や金属で出来た島に、先程ボク達を襲ったのと同じ隕石が落ちてきた。
ドガォオオオオンッッ!
隕石の直撃を喰らった鏡はその一部が粉々に砕けた。
その破壊力はまるで火山が爆発したか、大魔女エントラ様やルームさんが本気の魔法を使った時くらいの力だった。
つまり……大魔女エントラ様のバリアフィールドは、あの隕石の直撃すらも無効にするほどの防御力だったと言えるのだろうか。
そりゃあ彼女が安心してもいいと言うわけだ。
「ユカ、島が見えてきたけど、あの島に到着していいかねェ」
「はい、エントラ様お願いします」
ボク達は大魔女エントラ様の魔法のおかげで忘れ去られし者達の集落らしい場所に辿り着くことが出来た。
「この島の入り口、どうやったら入れるんだろうか?」
ボク達が到着した島の入り口は、古代の遺跡と同じような扉で塞がれていた。
もしここが忘れ去られし者達の集落なら、誰か開けてくれないものだろうか?
「すみませーん! 誰かいませんかー!?」
ボクは大きな声で中の人を呼ぼうとした。
誰かいるなら出て来てくれないだろうか……。




