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618 オリハルコンはどこにある?

 ボクと大魔女エントラ様はターナさんにオリハルコンと古代文明の剣エクスキサーチを預け、冒険者ギルドのボクの部屋に戻ることにした。


「それじゃあターナさん、お願いします」

「ああ、わかったよ。ユカ、くれぐれも……オリハルコンとゴルガの名前は人に聞かれないようにね。マジで命に係わる話になるから」

「わかりました。気をつけます」

「ホント、気を付けるんだよ。それじゃあまた三日後ね」


 ターナさんはボク達と別れた後、地下工房にカギをして作業を始めたようだ。


 部屋に戻る途中、周りに誰もいないことを確認した上でボクは大魔女エントラ様に質問をした。


「エントラ様、ターナさんの所で言ってたコレクションの話ですけど……本当にオリ……」


 ボクが話を聞こうとしたところで大魔女エントラ様は杖をボクの口に当てて会話を止めさせた。


「おっと、ユカ。ターナちゃんが周りで誰が何を聞いているかわからないと言ったわよねぇ。迂闊じゃない?」


 そう言うとエントラ様は何かの魔法をボク達の周りに使ったようだ。


「認識疎外の魔法。今この場所は音も視覚も全部誰にも気付かれないようにしたからねェ。今ならさっきの話をしてもいいからねェ」

「わかり……ました。すみません。」


 大魔女エントラ様はニッコリとボクに微笑んだ。


「まあ、ウッカリってことはあるからねェ。でもそれが致命傷にならなきゃ問題ないのよねェ。それで、さっきの話だけど、流石に(わらわ)のコレクションにもオリハルコンは無いけどねェ」

「ええっ? それじゃあなぜターナさんにあんなことを?」

「そりゃあねェ。ユカがスキルでいくらでもオリハルコンを作れるなんて言ってしまったら、今度は黙っていても変な噂でアンタが狙われるようになるかもしれないからねェ。それなら長年生きている(わらわ)のコレクションの貴重品だと言った方が信ぴょう性はあるだろうってねェ」


 なるほど、そう言われればそうだ。

 ボクは自身の能力でオリハルコンの床板を作ることができると知った。

 でも下手にそれが周りに伝わってしまうと、今度はボクが公爵派貴族に狙われたりすると大魔女エントラ様は言っているのだ。


「確かに……その通りです。ボクが迂闊でした」

「まあそこまで考えこむことは無いからねェ。妾のコレクションとしてならオリハルコンの板を持っていてもおかしくない。つまりその板をターナちゃんに渡してあげればみんなの装備のレベルを一気に上げることもできるってことだからねェ」


 確かに、ボク達は今SSだのSSSクラスの強さだと言われている。

 でも最近は武器防具の強さの方がそれに追いついていないのも事実だ。


 多分古代文明の怪物であるバロールやウルティマ・ザインといった機械はオリハルコンやそれに準ずる金属で出来ている。

 それに対抗するためにはボク達もオリハルコンの装備を手に入れる必要があるのかもしれない。

 幸いそれを加工出来る古代の魔技師の技術を持ったターナさんと知り合ったので本来なら夢物語に過ぎないオリハルコンの武具をボク達が手にすることができる!


「エントラ様、分かりました。オリハルコンのこと、是非お願いします」

「フフフ、もちろんわかってるからねェ。さあ、今なら認識疎外で気付かれないから今のうちに作ってしまおうかねェ」

「はい! ボクの目の前の地面を……オリハルコンの床にチェンジ!」


 やはりこのオリハルコン変換はボクのマップチェンジスキルでもMPの大半を持っていかれるくらい困難だ。

 スキルを使った瞬間、その場に立っていられないくらいの疲労感と倦怠感がボクを襲った。


 それだけの膨大なMPを使ってもボクが作ることができたのは、人が一人寝転ぶ事ができるくらいの広さに貼られたオリハルコンの床板だった。


「それじゃあこれは(わらわ)がしまっておくからねェ」

「は……はい、お願いします」


 ボクは体力とMPの大半をオリハルコン精製のマップチェンジスキルに使ってしまい、その後三日間、どうにか辿り着いた冒険者ギルドのボクの部屋で眠り続けてしまった。

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