613 心当たりがあるといえば……
ボク達は盗賊の住処を後にし、冒険者ギルドの町に戻ることにした。
どうやらソウイチロウさんが古代金属に関して詳しい人物の心当たりがあるとのことらしい。
ボク達はドラゴンの神様であるアンさんの背中に乗せてもらい、その日の夕方冒険者ギルドの町に戻った。
ボク以外にはエリアさん、ホームさん、ルームさん、大魔女エントラ様にサラサさんとフロアさんにシートとシーツの双子の狼、全員を背中に乗せてもアンさんは余裕だった。
「ふう、一度行った場所でも、新たに戻ると気づかなかった発見があるもんだねェ」
「そうですね。エントラ様やアンさんがいたからあの奥の遺跡に気がつけました」
「それにシートとシーツのためにも墓参りも出来て良かったわ。もう二匹とも立派な狼ですものね」
「「ワオーン!」」
この旅は双子の狼の兄妹にとっても、とても意味のあるものだった。
聖狼族最強の父母と戦ったことで、シートとシーツの兄妹は大幅にレベルアップし、誰にも負けない自信をつけた。
「でもまさか俺達も聖狼族の力を受け取ることになるとはな」
「フロア、我……おかげで一緒に戦う力を身につけた。皆と共に邪神倒す!」
フロアさんサラサさんの夫婦は聖狼族のロボとブランカの魂を受け継ぎ、戦闘中に攻撃力の高い人狼の姿になるスキルを身につけた。
これは彼らが元々獣人族だから出来たことなのだろう。
でもいくら今のボク達がSS、SSSの力にレベルアップしたとしても、古代ゴルガ文明の機械で出来た邪悪な魔神、破壊神、それに空中戦艦を倒すのは厳しい。
あの凶悪な古代文明に対抗するには、その時代を知る人達の末裔に会わなくてはいけないのだ。
残念ながらサラサさん達フワフワ族は古代には召使いの立場だったらしく、文明に関することはほぼ知らないらしい。
そんな中でソウイチロウさんが古代文明に関することを知っている人がこの冒険者ギルドの町にいるというのだ。
一体それは誰なのだろうか?
冒険者ギルドの町に着いたボク達は夕食を済ませ、部屋に戻った。
そこでソウイチロウさんがボクに語りかけてきた。
『ユカ、私の心当たりがあると言っているのは、今みんなが装備している武器防具を作ってくれた鍛冶師のターナさんのことだ。少し考えてみよう、古代金属ゾルマニウム……それを短時間で加工できる技術者なんて、そう簡単に見つかると思うか?』
『なるほど! そういうことですか。つまり、古代金属を扱える鍛冶屋なんてそう簡単にいない。それなのに彼女は数日でボクの鎧やみんなの武具を作ってくれた技術者だと言いたいのですね!』
『その通りだ。今そこの布に包んだ古代金属の床、ターナさんにそれを見せてみれば彼女が本物かどうかわかるだろう』
確かにそう言えばそうだ。
ボク達の今使わせてもらっている武器防具は鍛冶屋のターナさんが全部作ってくれた。
今考えるとレベル40でも簡単に傷つけられない金属をいとも簡単に加工する技術、それは間違いなく普通の鍛冶屋ではありえない。
「みんな、夜遅いけどボクちょっと出かけてくるね」
ボクはあえて誰も連れずにターナさんの工房に向かった。
工房は扉が閉まっていたが、部屋からは灯りが漏れていたので、彼女は工房の中に居るようだ。
「ターナさん、ここを開けてください!」
「ン? 誰だよ! もう夜遅いってのにっ!!」
「すみません、ターナさん。どうしても話したいことがありまして……」
「おや、ユカじゃないか。その布に包んだ板は何だい?」
ターナさんは鍛冶屋の勘でボクが何かを持ってきたことを察したようだ。
「何か……面白そうな匂いがするね、まあ入りな」
ターナさんは上機嫌になってボクを部屋に入れてくれた。




