610 空帝戦艦アルビオン
伝説の竜王に匹敵するほどの強さ、それが古代文明ゴルガ軍国による機械仕掛けの究極兵器オルビス・ザインだった。
「バロール、ウルティマ・ザイン、それにオルビス・ザイン……。古代文明のバケモノがこんなにいたなんて」
ボク達は古代人の作った怪物の恐ろしさを銀色の円盤で色々と知ることができた。
だがその中には弱点や攻略法のヒントになりそうなものは残念ながら見つからなかった。
「ダメだ、この円盤の中身を見てもこれらの怪物が恐ろしく強いと言うのがわかるだけで、攻略方法とかがまるで分らない」
「そうねェ。これはまるでその強さを見せるためだけに用意されたようなモノで、実際の資料としてはイマイチ実用性に欠けるみたいだねェ」
もし大魔女エントラ様の言う通りだとすれば、この銀色の円盤は何のために作られたのだろうか?
ボクがその疑問を感じていた時、ソウイチロウさんがその答えを教えてくれた。
『ユカ、これはプロモーションビデオ、デモンストレーション用映像ってやつだろうな。目的としてはプロパガンダ……つまりはこれを見せつけることでゴルガ軍国に従わない連中を脅すために使ったものなのだろう』
『ソウイチロウさん、それだとこれは宣伝のために作られたってことですか?』
『そうだろうな、だから下手に弱点や実際の運用方法等は書かれていなかったのだろう。それよりは敵国に対して実際よりも誇張して強く見せたりすることで更なる服従を迫るための取引材料に使われたと考えてもいいかもしれない』
つまりソウイチロウさんはこれは国家に対するゴルガ軍国が使った脅し用の道具だと言いたいのだろうか。
「まあこれはタチの悪い脅し用の道具として使われんだろうねェ。従わない相手には圧倒的な力で滅亡させるだけの力を見せつける……道具としては十分だからねェ」
大魔女エントラ様がソウイチロウさんの言いたいことをみんなに分かりやすく説明してくれた。
やはり彼女はボクとソウイチロウさんが一緒の身体で意識を共有していることを把握しているようだ。
「とにかくコイツらを破壊するためにはもっと多く調べる必要がありそうだねェ。ここに在る円盤はコレでオシマイだろうからねェ」
大魔女エントラ様が残りわずかな銀色の円盤の中身を見ると、そこに映っていたのは見覚えのある姿だった。
「これは……空の上でボク達が襲われた……ヤツ?」
「空帝戦艦アルビオン。それがコイツの名前みたいだねェ」
「なんというバケモノじゃ、こんな巨大な船が空を飛ぶ自体が奇天烈じゃがな」
銀色の円盤の中に映っていたのは、先日ボク達が空で襲われた巨大な空中戦艦だった。
空帝戦艦アルビオン。それがこの怪物の名前らしい。
ボク達はその全貌を見ることができた。
雲海の中に存在したアルビオンは、全体を雲に包まれていてその全体の姿がよくわからなかったのだ。
「なんて大きさなの。お父様の城よりも大きいなんて」
「ルーム、僕も信じられないよ。でも、実際僕達は空の上で見たはずだ。この怪物が飛ぶ姿を」
「あ……アレは悪夢でしたわ。今でも信じられませんわ、あれほど巨大な城にも匹敵する大きさの船が空を飛ぶなんて。子供の頃の冗談で聞いた城が歩いて来るなんて想像するだけでもビックリしてしまいそうですのに」
まあ普通の人はあんな巨大な物体が空を飛ぶなんてこと自体が信じられない。
しかしボク達はあの空飛ぶ怪物を実際に見てしまったのだ。
古代文明の帝国、ゴルガ軍国の作り出した怪物、バロール、ウルティマ・ザイン、オルビス・ザイン、そして空帝戦艦アルビオン……。
ボク達は下手すればこれらの全てと戦わなければいけなくなる。
こんな古代のバケモノたちに勝つことなんてできるのだろうか……。
ボク達は銀色の円盤を透明の箱にしまいながら、これから来るべき戦いに不安を感じていた。




