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608 ウルティマ・ザイン

 ゴルガの作り上げた古代兵器、それは恐ろしい破壊力を持つものだった。

 その中でも突出していたのが、破械伸バロール、ウルティマ・ザイン、オルビス・ザインと呼ばれる巨大な機械の怪物だ。


 大魔女エントラ様が見せてくれた銀色の円盤にはその詳細が色々と書き込まれていた。

 実際に動く姿もどういう原理で残したのかわからないが、その円盤で見ることができた。


「何だよ、これ……」

「まさに……悪魔ですわ」


 バロールの動く姿は、ボク達の想像をはるかに上回る恐ろしいものだった。


 天空に浮いていた一つの小都市、それもはっきり言えば今のボク達の住む村や王都の城よりも頑丈そうな建物が、バロールの目からの光線一つで真っ二つに断ち切られ、内部から崩壊し……空中に浮かせていたパーツらしいものが膨らんで完全消滅するまでに一分もかかっていなかった。


 また、そのカギ爪で引き裂かれた山と海が同じ形で出来ているものでないのに、バロールによって何も無いかのように切り裂かれてその場が消滅していた。


「何という恐ろしい力じゃ、こやつ……空間ごと目の前のものを切り取りよったぞ!」


 アンさんですら驚愕するほどの破壊力。

 このバロールという機械の悪魔は巨大な目と何物も切り裂いて消滅させる爪で次々と無人の野を作っていった。


「バロールだけじゃないからねェ。これも……かなりヤバいモノだねェ」


 大魔女エントラ様が次に用意してくれた銀色の円盤は、ウルティマ・ザイン、オルビス・ザインに関する資料だった。


 巨大な牙の生えた生き物のような姿をしたその怪物には、背中に巨大な二本の柱が括り付けてあった。

 それは何かの武器なのだろうが、あんな風に背中に持っているだけでは普通に使うのは出来ないはず、ボクはそう思ったが……ソウイチロウさんはそうではなかった。


『まさか……この世界で荷電粒子砲を使える機械が存在したと言うのか……』

『ソウイチロウさん、そのカデンリュウシホウって……?』

『この後の映像を見ていれば分かる……』


 円盤に記録されていたウルティマ・ザインは微動だにしなかった。

 だがその後、ボクはコイツの恐ろしさを目にすることになる。


 動かないウルティマ・ザインは敵国の兵士らしいものに大量に集られて攻撃される一方だったが、その外装には傷一つ付いていない。

 そのウルティマ・ザインが動き出した時、周りにいたはずの兵士は誰一人残っていなかった。

 コイツが歩いただけで周りにいた兵士が全て消滅したのだ!


『何というエネルギーの奔流だ! この高熱のエネルギー波を浴びたら人間なんて一瞬で蒸発してしまう』


 なんとこの怪物は身体にとんでもない高熱を持ち、その熱で人間を一瞬で消滅させてしまった!


 だがコイツの恐ろしさはそれからだった。

 ウルティマ・ザインが背中に背負った二本の柱、それが前面に押し出されて長い竿のようになった。

 そして、竿の上部が外れ、上にスライドすると、今まで熱を集めていたウルティマ・ザインの身体のエネルギーがその巨大な竿に集められた。


「何ということじゃ、これは……破壊の光!?」


 ウルティマ・ザインが凄まじい雄たけびを上げ、背中の光る竿から強烈な二条の光の矢を放った。

 すると、前面にあった巨大な崖が一瞬で溶け、光の矢が貫いた後は何一つ残らなかった。


「何だよ……これ……」


 円盤に記録されていたものはそこで終わっていた。


「なになに……ここに書かれているのは、意味不明だけど何か気になるねェ」

「え? 何と書かれているのですか?」


 円盤の最後に書かれていたのは、このような文面だった。


『神すらも超えし究極の力、ウルティマ・ザイン。その力を地の底深くに封じる。ゴルガよみがえりし時、それは砂漠の地より再び姿を現さん』


 ウルティマ・ザインはゴルガ滅亡の後、砂漠のどこかに封印されたらしい。

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