607 ゴルガの負の遺産
ボク達は円盤の中のデータでバロールはゴルガが作った究極の破壊兵器だということを知ることができた。
しかしそこにあった円盤は更なる恐怖をボク達に与えることになった。
「な……何なのこれ!?」
「機械仕掛けの巨大な虫? いや、虫ではない多脚型の生き物だねェ。こちらは、タルカスに……おや、コレは見たことが無いねェ、何か巨大な剣を持った魔獣みたいに見えるけど、こんな生き物は長年生きているけどやはり見たことが無いねェ」
ボク達はゴルガ軍国が古代に作った機械仕掛けの怪物の一覧を確認していた。
そこに映っていたのは、大小様々な機械で出来た破壊、殺戮のためだけの兵器だった。
「えんとら、そんな呑気なことを言っておる場合か? ばろーる以外にもごるがはこのような機械仕掛けの怪物を次々と作っておったのじゃぞ」
流石のアンさんもこの資料にあった機械仕掛けの怪物の姿に冷静さを失っている。
長年生きているドラゴンの神様ですらうろたえるって……ゴルガという国は一体何をそんなに大量に作ったのだろうか。
「まあタルカスはユカ達がぶっ壊したんでしょ。だったら倒せない敵じゃないってことだねェ」
「おぬしは楽天的じゃのう。何なんじゃ、この『うるてぃまざいん』だの『おるびすざいん』という見るからに凶悪な機械のもののけは!?」
アンさんが指差したのは、大魔女エントラ様が映した機械の魔神のようなものだった。
それの説明は古代語で『ウルティマ・ザイン』、『オルビス・ザイン』と書かれていた。
ザインは……古代の言葉で武器を意味するらしい。
つまり、バロール以外にも究極レベルの巨大な機械仕掛けの魔神は二体存在するということだ……。
『ユカ、このゴルガという国、マジでヤバい連中だったかもしれないぞ』
『ソウイチロウさん、また意味不明なことを言ったら無視しますからね』
彼が何を伝えたいかわからないが、ボクに意味不明の言葉は使わないで欲しいことが伝わってくれればいいんだけど。
『わかった、できるだけ分かりやすく伝える。ユカ、ゴルガ軍国というのは、巨大なゴーレムを自在に作ることができるだけの文明を持っていた国だということだ。そのゴルガが作り上げた究極破壊兵器と言えるのが、破械神バロール、ウルティマ・ザイン、オルビス・ザインということだ。この三つは見るからにそれぞれが別の強さに特化しているだろう』
『ソウイチロウさん、なぜそんなことがわかるんですか?』
なんとソウイチロウさんは古代のデータを見ただけでこの機械仕掛けの怪物がとんでもない能力を持っていると見抜いたらしい。
『大体こういう機械は、製作者の趣向が見えてくるものなんだ。このバロールは巨大な目玉にカギ爪、そして足が存在しないデザインだろう。これは……移動場所を選ばず、確実に攻撃相手を破壊するために特化した形だ』
凄い! ソウイチロウさんは見た目だけでこの怪物の能力が想像つくみたいだ。
『ウルティマ・ザイン。これは近距離特化型だろうな。背中に巨大な砲は搭載してあるが、見た目からしてすぐに撃てるような造りには見えない。遠距離に敵がいる間にエネルギーをチャージして撃つためのものだろう。そして近接してきた敵を切り裂くための巨大な剣、これがメインの武器だ』
この語り方、もしそれが嘘だとしても納得してしまうだけの説得力がある。
そしてこの分析が嘘でないことは素人のボクが見てもわかるくらいだ。
『これが……一番厄介だな、オルビス・ザイン。多脚歩行型移動要塞というべきか。見るからに頑丈さと攻撃力を兼ね備えた厄介な敵だろう……』
『ソウイチロウさん、このオルビス・ザインってそんなにヤバいやつなんですか?』
バロールだけでも手いっぱいだと言うのに、ゴルガの作った古代の魔神は他に二体も残っているのか……。
ボクは物凄く恐ろしいものを感じてしまった。




