605 解き放たれたバロール
風邪ひいて倒れてました。
これは昨日アップ予定の分です。
「無い……ここにあるはずの、バロールが……無い‼」
エリアさんは何もない空間を見て驚愕している。
ボク達も同じ場所を見たが、そこにあったのは何かとてつもなく巨大な物を繋ぎとめていた鎖の跡と、だだっ広い空間だった。
その空間から想定されるバロールの大きさは、あの大海獣レッドオクト以上だと言えるだろう。
「ふむ、ここにあった物がいかに巨大かというのはあの鎖を見ればわかるのう、一体誰がそれを持ち出したと言うんじゃ?」
「ユカ達は以前、ここにあった盗賊の住処で戦ってたって言ってたねェ。そこから考えられるのは……盗賊達が住み着いたのはここにったバロールが持ち出された後ってことなんじゃないかねェ……そうじゃなきゃバロールによって盗賊なんて一瞬で消し去られてただろうし、下手すればこの辺り一帯全てが焦土になってたかもしれないねェ」
確かにそう言われればそうだ。
あの古代の船の中で見たバロールとダルダロスの戦いを見れば、片方だけでもこの辺り一面が人の住めない焦土になってもおかしくない。
「ということは、バロールはそれよりも前に見つかったってことですか?」
「恐らくそうだろうねェ。そして、それを持ち出せるだけの技術と武力を持っている連中……この世界でそれをできるなんて限られてくるだろうねェ」
「まさか……魔族!?」
「その可能性は十分考えられるだろうねェ。でももしそうだったとしたら、もう既にあの南方の決戦で妾達はバロールと戦うことになってただろうねェ」
そう言われれば確かにそうだ。
いくら未完成や整備不良と言っても、あの南方での魔族と人間の総力戦にバロールを出さないわけがない。
そう考えると、バロールを発掘したのは魔族という線は消える。
「でももし魔族でないとするなら、持ち出したのは一体……」
「グランド帝国……いや、もっと言うなら可能性が高いのは公爵派と言ったところかねェ」
「‼‼」
確かに、アイツらは古代の巨大飛行戦艦アルビオンを手に入れている。
その技術力があるとするなら、バロールをここから封印を解いて持ち出すことも十分ありえる。
最悪の連中に最悪の兵器が渡ってしまった可能性が特大だ。
幸いまだバロールが姿を現したという話は聞いたことが無い。
そう考えるとバロールはまだ封印こそ解かれたものの、使われた気配が無いということか。
「エリアさん、バロールを倒す方法はあるんですか?」
「恐らくは黄金巨神ダルダロスを使うしか……しかしそれは最後の手段。もしダルダロスを使えば、バロールとダルダロスの戦いでこの地上の大半が人の住めない世界になってしまいます……」
ダメだ、それは避けないと。
だが今手をこまねいていては、覚醒したバロールのせいでこの世界がメチャクチャにされてしまう。
どうにかダルダロスを使わずバロールを倒す方法を考えないと。
「みんな、とにかくここに何かヒントになるものがあるかもしれない。手分けして探そう!」
ボク達はバロールの封印されていた大広間のあちこちをくまなく探した。
ボク達がそこで見つけたものは、銀色の円盤数枚と何か四角い形の黒い金属で出来た小さな箱、そして何本かの細い管だった。
「さて、これを使えば何かがわかるかねェ」
「エントラ様はどうやってこの銀色の円盤の中身を見たのですか?」
「ああ、そのやり方ねェ、まあここでも可能みたいだからやってみようかねェ。少し離れて見ているんだねェ」
そう言うと大魔女エントラ様は銀色の円盤を手に持ってニヤリと笑った。
この銀色の円盤、どうやって中身を見ればいいのだろうか?
「まあ、妾に任せてみればいいからねェ」
大魔女エントラ様が銀色の円盤の一枚目を指で取り出した。
この円盤に何が入っているのだろうか?




