604 解き放たれた封印
エリアさんの話を元に、今後僕達のやるべきことは……バロールと巨大飛行戦艦アルビオンの破壊ということだ。
しかしそれを作った古代の民の末裔がどこにいるのかがわからない。
そして黄金巨神ダルダロスとバロールの戦いの結末はまだ話を聞いていないのでどうなったのかがわからない。
「エリアちゃん、そのダルダロスとバロールの結末はどうなったか覚えてるかねェ?」
「いいえ、私はその頃ゴルガを扇動していた邪神ダハーカと戦い、半身を使ってこの地下に彼を封印したのです」
なるほど、それがこの盗賊の住処の本来の場所だったのか。
「それじゃあとりあえずこの話は保留だねェ。それで……ここに封じられた邪神ってのはどうなってるのかねェ」
「邪神……ですか。私の半身が残っている限り、邪神ダハーカは封印を解かれてもおかしくありませんでした。そして私はクーリエの半身を誰もいなくなった天空の遺跡に、残った半分をガーゼットに守らせ、エイータの神殿で聖杯に神の力を移して永劫の眠りについたのです」
エイータの神殿というと、ソウイチロウさんが聖杯の力を手に入れた場所だ。
『なるほど、コレで全部の謎が解けた。私が手に入れた力はやはり創世神の力だったのだ。だからただの床を貼る力が神に匹敵する創世の力になったということだ』
ボクとソウイチロウさんの意志を読んだのか、大魔女エントラ様がみんなに分かるように説明の補足をしてくれた。
「つまり、ユカのスキルは元々創世神だったエイータ、つまりエリアちゃんの本当の力を受け取ったもの、そして伝説に語り継がれていた聖杯の力とはエイータの神の半身の力を分離したモノだったってわけだねェ。そりゃぁユカの力が常人を大きく上回るわけさねェ。なんてったって創世神の力なんだからねェ……」
ボクはなんだか少し申し訳なく感じてしまった。
ボク、そしてソウイチロウさんが手に入れた力は本来創世神エイータの力……つまりはエリアさんの力だったんだ。
「ボク……エリアさんの力を勝手に使っていたんですね……」
「いいえ、ユカ。あなただから……そう、あなた達だからこの力を正しく使ってくれたのです。あなた達は人を苦しめるため、自身の欲望のためだけにこの力を使おうとしましたか?」
「いいえ、ボクはそんなことはしていません!」
エリアさんが優しく微笑んだ。
その表情は……まさに女神の微笑みといえるほど、美しく……とても可愛らしかった。
「そうでしょうね。あなた達はこの力を正しく使ってくれました。いえ、もっと言えば私には使い切れないスキルの使い方で多くの人達を助けてくれました。あなた達の力が無ければ、今も多くの人達が苦しんでいたことでしょう……」
ボク、そしてソウイチロウさんはどちらも苦しんでいる人達を見捨てられない性格だったらしい。
だから悪徳貴族や魔族、魔将軍達に苦しめられていた弱い人達を助けるためにこのマップチェンジスキルを使い戦った。
「ユカ様、今もあの巨大戦艦のせいで多くの人が苦しめられていますわ! 一日も早くアレを破壊しなくては……不幸な人達がどんどん……」
「ルーム、その気持ちはよくわかる。でもどうやってアレを倒すと言うんだ?」
そうだ、実際空を飛ぶあの怪物を倒さないことには……。
「ここに何かあのアルビオンの弱点になるモノがあるかもねェ……」
ボク達はここにある古代の遺産を調べることにした。
遺跡の中を探索している時、エリアさんの悲痛な叫びがこだました。
「ま……まさか……そんな、信じられない」
エリアさんが驚愕の表情でその場にへたり込んでしまった。
「無い……ここに封印されたはずの……破械神バロールが……無い‼」
ボク達がエリアさんの見上げた空洞を見ると、そこには巨大な鎖を断ち切った巨大な残骸が残るだけだった……。




