603 魔技師ダルダロス
「破械神バロールの力は全てを滅ぼすものでした。それは一夜にして地上の国を焦土に変えたほどです。バロールの力を手に入れた軍王ゴルガはその力に酔いしれ、自らに逆らう者はたとえ子供一人であろうと許しませんでした」
「聞けば聞くほど不快じゃのう……それで、その、ごるがとやらはどうなったのじゃ?」
「軍王ゴルガには誰一人として勝てませんでした。それほど破械神バロールの力は強大だったのです……」
そのバロールというのが古代文明を滅ぼしたのか……。
「それで、バロールはどうやって封印されたのかねェ……」
「って?? えんとら、おぬしいつの間にここにおったんじゃ!?」
そういえば大魔女エントラ様は冒険者ギルドの町で調べものをしていたはず。
それなのになぜか、しれっとボク達の会話の中に混ざっていて誰も気が付かなかった!
「あの円盤を調べていてとんでもないことがわかったからねェ、それを伝えるためにここに飛んできたんだねェ」
彼女なら何があっても別にもうおかしいとも思わない。
そう思うようになってきたボク達がおかしいのかもしれないけど、大魔女エントラ様なら仕方ない……という空気も流れている。
「話を続けてもいいでしょうか? ……バロールを封印することは並大抵のことでは無理でした。あれは古代文明、ゴルガ軍国の邪悪な魔法文明による技術の粋を集めて作られた究極兵器だったのです」
「それなら、どうやって倒したんですか?」
「バロールに蹂躙され、私達の住む天空の都市も地上に墜落し、全員の滅びを待つしかありませんでした。そんな中……バロールを倒すためにはそれ以上の力が必要だと言って、黄金の巨神を作るものが現れたのです。その者の名は……魔技師ダルダロス」
「ダルダロス……古代の魔神の名前と同じだねェ……」
「そうです、ダルダロスは……制御しきれない黄金の巨神を自らのものとするため、自身の魂を完成間近だった黄金の巨神に移したのです。そしてその巨体を制御するため……自らの名前を関した、それが黄金巨神ダルダロスなのです」
黄金の巨神ダルダロスとバロールの戦いはボク達がフワフワ族の集落近くの遺跡で見たものだ。
あの記録がそんな物だったとは知らなかった。
「ダルダロスは魔神ガーゼットや、黄金の鳥と呼ばれる飛行鳥グランナスカを作った古代文明最高の魔技師だったのです。そんな彼が生涯最後に作り、自らの魂を移したモノ、それが黄金巨神ダルダロスでした」
黄金の鳥? それって、あのフワフワ族のウルツヤ様が言っていた黄金のコンドルのことなのか。
「グランナスカ? 初めて聞く名前だねェ」
「ナスカとは古代に存在した鳥の名前、その姿を模した人が乗れる黄金の巨大な鳥……それがグランナスカです」
なるほど、その話が言い伝えとして黄金のコンドルになったのか。
「話を戻します。ダルダロスはバロールと三日三晩戦い、その戦いは地上の大半を日の住めない土地に変えてしまいました。そして戦いの後わずかに残った者達は天行く船に乗り、まだ人の住まなかった未開の地に行くものと、山奥の誰も来れない場所に移り住んだのです」
「ふむ、どうやらそれがミクニと呼ばれる前のヒモトの創世神話の一端じゃったわけじゃな。つまり、ヒモトの民は古代の民の末裔じゃったわけか」
古代の神話を知る創世神であるエリアさんだから知っていたこと。
それを話してもらったことで、ボク達は今まで知らなかった世界の事実を知る事ができた。
その後もエリアさんの話はもう少し続いた。
「そして、戦いが終わる時が来たのです。しかし、それは決して喜ばれるような結末ではありませんでした……」
最後の話をする時、エリアさんが悲しそうな表情を見せた。
ボク達はその話を真剣な表情で聞き、今後何をするか話し合った。




