602 魔神と破械神
「古代の民達は私を信仰する者達と、邪神の手下となり敵対する者達の二つに分かれました。その邪神の手下になった者達、それがゴルガです」
「ゴルガ?」
「ゴルガ軍国、邪神ダハーカを信望し、他者を踏みにじることで力を得ようとした軍王ゴルガの率いる古代の軍団の名前です。彼らは知恵を邪悪な力とし、空を飛ぶ飛行戦艦、魔法が無くとも遠くを攻撃できる魔法の筒、巨大な鏡を使った太陽光台による熱線等、多くの者をその凶悪な文明の力で蹂躙しました」
そのゴルガ軍国の使っていたのがあの巨大な空中戦艦なのか……。
「私達は最初、戦いませんでした。争いは更なる争いを呼ぶとわかっていたからです。ですが、ゴルガは争いを避けるため天空に逃れた私達の民すらも制圧しようとしたのです。この時の襲撃で多くの古代人が命を失いました……」
「酷い……」
「ゴルガの要求は服従か死しか認めないものでした。私の大切な古代の民はこの時、初めて仲間を守るために戦いを選んだのです」
「それで……どうなったんですか」
「ゴルガの襲撃を逃れた錬金学者、科学者、魔法技師、これらの者が集まり、ゴルガの大軍に対抗する巨大な魔神を作りました。その名は……ガーゼット。私を守るために作られた守護者の魔神です」
ひょっとして、この魔神って……あの忘れられた遺跡でソウイチロウさんが戦った敵のことなのか?
「その魔神って……エイータの神殿にいたあの巨大なヤツのことですか?」
「そうです、アレは古代金属ゾルマニウムで作られた巨大ゴーレム、私を守るため。そしてゴルガの侵攻を食い止めるために作られた巨大な魔神だったのです」
「それであの強さだったんだね」
ボクはソウイチロウさんの記憶を共有している。
その中で覚えていたのがエイータの神殿で戦った魔神だった。
あの強さなら、確かに敵の軍団も殲滅できる程だ。
「ガーゼットは迫りくるゴルガの大軍を次々と叩き潰しました。今まで一方的に攻めるだけだった彼らはガーゼットの力にどんどん倒れていきました」
それがなぜ、エリアさんに近づこうとするソウイチロウさんに襲いかかったんだろうか?
「ガーゼットは特殊な命令を受けていました。それは……例え誰一人いなくなっても、創世神……つまり私を守り続けろというものです」
つまり、ボク……ソウイチロウさんはエリアさんに害をなす存在と見られ、襲われたというわけか。
「しかし古代の文明は完全ではありませんでした。無敵を誇ったガーゼットでしたが、ゴルガがそれに対抗する新たな力を作ったのです……それは全てを破壊する巨大な機械の神……すなわち、破械神バロール」
「バロールだってェ!? まさか……アレを作ったのは、そのゴルガって連中ってことかねェ」
「え? エントラ様はバロールを御存じなのですか?」
「アレにはひどい目に遭わされたねェ……妾とバシラ、テラスにヘックスの四人で遺跡に踏み込んだ時、つい魔法の罠にかかってしまってねェ……一瞬だけ発動させてしまったことがあるからねェ……」
破械神バロールについて話すエントラ様はどこか目が泳いでいた。
「どうせおぬしが古代の研究の成果が見たいとかほざいて、仲間の止めるのも無視して魔力でも注ぎ込んだのじゃろうって……」
「そ、そうじゃないからねェ! 妾がたどり着いた遺跡で、真っ暗で移動システムすら使い物にならなかったから、魔力を注ぎ込んで遺跡の動力を動かしただけだねェ……」
アンさんがジトーとした目で大魔女エントラ様を哀れな者を見る目で見ている。
「それで古のバケモノを呼び起こしておるんじゃ世話無いわい……」
「だーかーらー、反省してるってねェ!」
「あの……話を続けてもいいでしょうか?」
エリアさんの話はまだ続くようだった。




