表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

601/944

593 二匹を呼ぶ声

 サラサさんはフワフワ族の巫女だ。

 その彼女が踊りの中で何かを感じたらしい。


 どうやらこの踊りは、魔法的な儀式の踊りだったようだ。


「サラサさん、呼ぶ声って何ですか?」

「この声……父、母が子供を呼んでいる……、場所、ここからそう遠くない」


 サラサさんが言うには、ここからそう遠くない場所で誰かの両親が子供を呼んでいるらしい。


「サラサさん、もう少し詳しく分かりますか?」

「いや、お告げこういうもの……後はその者が気付くこと」


 その者と言っても、誰の親が誰を呼んでいるのだろうか?

 どう考えてもボクやホームさん、ルームさん達ではない。

 フロアさんやサラサさんなら本人たちが何か感じるだろうからそれもないだろう。

 エリアさんも違うだろうし、ここにはカイリさんやマイルさんもいない。


 大魔女エントラ様やアンさんなら本人が気づくだけの魔力があるだろうからそれもあり得ないだろう……。


 そう考えると……ボクが思い当たる可能性を探していた時、高らかに咆えたのはシートとシーツの二匹の兄妹だった。


「アオォーーーン!」

「キャオォーン!」


 ‼ そうか、この二匹のことを忘れていた。


 ソウイチロウさんの記憶を共有しているボクが知っているのは、この二匹は盗賊の住処で魔獣使いに操られて死んでしまった銀狼王ロボとその奥さんのブランカの子供だ。


 盗賊の住処は旧ヘクタール領の近くで、ここからだとそう遠くはない。

 その場所からの両親の思いを巫女のサラサさんが受け取ったなら、確かにサラサさんの受けたお告げは、親が子供を呼ぶ声ということにも当てはまる!


「そうか、シートとシーツだ!」


 二匹の狼の兄妹はしっかりとした目でボクを見据えている。

 その目から伝わってくるのは、両親に会いたいという思いなのだろう。


「二匹とも、行こうか!」

「「ワオォォーン!」」


 ボクの呼びかけに二匹はとても嬉しそうに咆えた。


 二匹は最初、あまり食欲が無かったようだったが、ボクが彼らの親に会おうと言ったらとても元気になり、山盛りにしていた骨付き肉を残さず平らげた。


「凄い食欲じゃのう、よほど嬉しかったのじゃろう」

「あれ? アンさんは気付いていたのですか?」

「まあ、薄々な。しかし何でも教えては成長が無かろう。じゃから黙っておったのじゃ」


 この人はやはり相当長年生きてきたとわかる。

 アンさんは優しい目で嬉しそうな二匹の兄妹を眺めていた。



 次の日、ボク達は盗賊の住処のあった山岳地帯に向かうことにした。


「あれ? エントラ様は?」

「どうやら調べものがあるらしく、昨日からずっと部屋に閉じこもったまま出てこないみたいじゃな」

「そうなんですね」


 みんなは呆れたというより、まああの人なら仕方ないなといった感じでその場を流していた。


「ほれ、乗るがよい。ボヤボヤしている時間は無かろうて」

「アンさん、ありがとうございます」


 アンさんが紫のドラゴンになり、ボク達を背中に乗せてくれた。

 サラサさんはもうこの姿を見たことがあったが、ウルツヤ様は初めて見たアンさんの変身した紫のドラゴンを見て腰を抜かしてしまっていた。


「すまんすまん、いきなりこの姿を見せて驚かせてしまったようじゃな……」

「いえ、ドラゴンの神、儂……とても素晴らしい!」


 ウルツヤ様はアンさんの背中に乗せてもらえたことがとても嬉しかったようだ。

 その表情はまるで子供のように純真に空の旅を楽しんでいた。


「もう少しで着くぞ。皆の者、舌を噛まぬようにな」


 アンさんの変身したドラゴンの飛ぶ速さは、徒歩だと数日かかる距離をあっという間に飛び越える!

 ボク達は朝方出かけたが、盗賊の住処だった山岳に到着できたのはお昼前だった。


「どうやらここみたいですね」


 ボク達は山岳の見晴らしのいい場所、大きな牙を墓標代わりに立てた銀狼王ロボとその奥さん、ブランカの墓の前に立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ