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591 邪神の手下、バグス

「みんなすぐにでも堀口さんに戻って来てほしいと言ってました!」

「そんなの信じられるかよォ!」

「全部和田原が仕組んだんですっ! アイツは私にとっても敵でした!」

「適当なコトを言うなァッ!」


 バグスとソウイチロウさんの会話はまだ続いてる。


「じゃあオマエは何でこんな所にいるんだよォ、それも説明できるのかよォ」

「私も和田原のせいで死んだようなものです、私はアイツにスタッフ全員の嘆願書を持ってゴルフ場に向かう途中で事故死しました……」

「何だとォ!?」

「和田原はマスコミへの見栄でパフォーマンスして、無茶な納期で未完成のまま発売しようとしていたのです。アイツはゲームへの愛情なんてまるで無く、ただの金儲けの道具にしか見ていませんでした」

「……」

「アイツが社長就任後にやったことは定年に程遠いベテランスタッフのリストラでした。金がかかる古参スタッフのクビを切って全部安い海外メーカーや専門学校の研修生のバイトに振ったんです!」

「バカかよォッ! そんなので……成り立つワケ、ねェだろうがァ!」


 ソウイチロウさんの話で彼が動揺しているのは、バグスとしてではなく、転生者ホリグチとしてなのだろうか?


「ハッハハッ……それじゃァクレームが増大するわけだァ、ベテランがほとんどいないんじゃなァ……」

「アイツのせいで新作を作れなくなったスタッフは次々に辞めていきました。今やスマートフォンでの新興ソーシャルゲームメーカーで働いている凄腕の大半が元トライアってくらいです」

「スマートフォン? 何だよォ、ソレ!?」

「スマートフォンを知らないってことは、堀口さんが亡くなったのはその以前だったんですね……」

「ボクのことなんてどうでもいいだろうがァ! まァ話は分かった。だが、それを知ったからってボクのやることは変わらないからなァ!」


 そう言うとホリグチ……いや、バグスは再び大型船の壁に触れ、何かを始めた。


「ボクは気が付いたんだよォ。自分で作るよりも……他人が作ったモノをぶっ壊す方が楽しいってことにさァ!」


 狂気に満ちた目に戻ったバグスはそう言うと次々とスキルを使って大型船の壁を溶かしている、どうやらこれが数値変換の力の一つなのだろう。


「追い出し部屋のコールセンターの中……心臓発作で死んだボクは世界を呪った。そのボクの願いを聞いてくれたのがこの世界の邪神だったんだよォ!」

「堀口さん、貴方は本当に悪魔に魂を売ってしまったのですかっ!?」

「ハハハハッ楽しいぜェ、他人の作ったモノを一瞬でぶっ壊すッ、この力は邪神がボクにくれたんだよォ!」


 バグスは船のあちこちに移動し、壁に触れることで次々とバラバラに壊していった。

 そしてものの十分少しで、あの巨大船全てが跡形もなく姿を消してしまった。


「さァ、もうおしゃべりはオシマイだよォ。キミにも今度こそここで退場してもらうかァッ!」


 バラバラにした船のあった場所にバグスが立っている。

 あそこは先程ボクがワープ床を作った辺りだ。


「ハハハハッ、オシマイだよォッ!」


 そう言ってバグスは船の残骸のあった上空に舞い上がった。

 ボクが今いる場所は床一面に敷き詰められた謎の模様のある場所だ。

 どうやらこれがマジックキャンセラーを発動させるための地面なのかもしれない。



『ユカ、ここはどうすればいいと思う?』

「そうですね……ボクが以前やった方法を試してみますっ!」


 ソウイチロウさんはボクに身体の主導権を戻してくれた。


「おやァ、もうあきらめたのかァ?」


 ボクはバグスを睨みつけ、その足元をマップチェンジスキルで変化させた。


「足元の地面の高さを際限なくチェンジッ!」

「なッ!?」


 バグスの足元の地面が一気にせり上がり、彼の身体は空高くに打ち上げられた。


「やった、今のうちに逃げようっ!」


 そしてボクはワープ床を作り、それが1分後に消えるように設定した。

 これは時間制のトラップとの合わせ技、イチかバチかで作ってみたがどうやら設定次第で可能だったようだ。


 ボクはワープ床でその場を離れ、バグスから逃げることに成功した。

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