589 推測が確信に
「何故お前がこんな所に!?」
「さあねェ……そんな事どうでもいいだろォ。それより、どうしてキミ達はいつもいつも邪魔ばかりしてくれるのかなァッ!」
バグスは怒りに満ちた表情でボク達を睨んでいる。
アイツは一体何を考えているのだろうか?
一つ言えるのは、アイツはボク達の敵で、絶対に相容れる存在ではないことだけだ。
世の中の全てを憎んでいるかのような狂気を感じる目。
アイツが望んでいるのは世界の破滅だ。
そのためにアイツは世界中のどこにでもいきなり現れて、その場をメチャクチャにする。
魔将軍マデンやアビスといった奴らと組んでいるのもそのためだろう。
だがアイツは魔族ではないようだ。
『ユカ、アイツには気をつけろっ! アイツは強いぞっ!』
『ソウイチロウさん、アイツは一体何者なんですか!?』
『……まさかとは思うが、私に心当たりがある……』
どうやらソウイチロウさんはバグスが何者かを薄々と感じているようだ。
でもボクには想像がつかない。
「アンタ、一体何を考えているんかねェ!?」
「フン、ボクのことなんてお前達がわかるわけがない、まあどうでもいいだろォ、こんどこそキミ達にはここで消えてもらうんだからさァ!」
そう言うとバグスは手元から出したコインを弾いた。
『気をつけろユカ、アイツの能力は何が起きるかわからないんだっ!』
『何が起きるかわからない!? それってどういうことですか』
『言葉通りのことだ、本当に意味不明なことを起こすんだ』
意味が分からない。
だがバグスが弾いたコインは不思議な動きでボク達のいる船の動力部分と呼ばれる場所に当たった。
すると、今まで動くことが無かった船から振動が始まり、動力部分が回転を始めた。
「ハハハハハッ! キミ達はこの船のエンジンの暴走に巻き込まれて木っ端になりなァ! ここの古代の文明もキミ達と一緒に吹っ飛べば誰もアルビオンを止める者はいなくなるからねェ! 」
回転を始めた動力部分は暴走し、凄いエネルギーを放っている。
このままでは本当に爆発しかねない!
「みんな、とにかくここから逃げようっ!!」
ボクはここにいる全員を先程作ったワープ床まで誘導し、この船から脱出することにした。
「おっとォ、何処に逃げようというんだよォ!?」
「!!??」
バグスから逃げようと走るボク達だったが、なんと……彼はあり得ない動きを見せた。
逃げるボク達を追いかけてくるバグスは、壁をすり抜けて現れたのだ!
「な……何だアレ!?」
「おや、驚かせしまったみたいだねェ……大したこと無いよ、単に少し数値をいじっただけさァ」
それを聞いたソウイチロウさんが驚いていた。
『数値をいじっただけ!? まさか……いや、信じたくはないが、その口癖……やはり……』
『ソウイチロウさん、何なんですか!? 何がわかったんですか!?』
『今はそれを話している暇はないっ、全員避難させないと!』
『わかりましたっ!』
ボク達はバグスの追撃を逃げながら、どうにかワープ床のある戦闘指揮所と呼ばれる場所に辿り着いた。
「みんな、ここから脱出してくれっ!」
「わかりましたわっ」
「うむ、ここは退いた方が良さそうじゃな」
ワープ床から一人、また一人と脱出し、最後に残ったのはボク一人だけになった。
『ユカ、少し身体の主導権を貸してもらうぞ』
そう言うとソウイチロウさんはボクの返事を待たずに身体を動かした。
「まさか……バグスの正体が貴方だったとは。その口癖、忘れるわけがありません」
「おやァ? 何を言っているんだよォ? っていうかお前は誰なんだァ?」
「堀口さん、貴方なんですね! 何故、こんなことを……誰よりも物を作るのが大好きだった貴方が……何故……」
……どうやらバグスの正体はソウイチロウさんの知っている人物らしい。
ということは、彼も転生者だというのか?




