586 太古の映像記録
黄金巨神ダルダロスと破械神バロールの戦いの記録はそれで終わりだった。
何かのボタンを押すと、再びその記録が水晶に映し出されたが、先ほど見たものと同じだったのでボク達はもう一度それを見ることにした。
『ユカ、どうやらこの映像は記録されたファイルの再生ビデオみたいなものだな。ここには他にも役に立つものがあるかもしれないぞ』
ソウイチロウさんが言うには、ここは船の戦闘指揮所という場所で、ここには色々な資料があるというのだ。
ボク達はこの場所を色々と調べてみることにした。
幸い、この船の中は空気が保たれていたのか、古代の遺跡のようにボロボロに朽ち果てたモノはほとんどなく、大昔の姿そのまま残っているみたいな場所だった。
「ユカ様、何か見つけましたわ」
「ルームさん、何ですかそれ?」
ルームさんが見つけてきたのは、何か銀色の薄くて丸い板だった。
その板は不思議な透明で硬い箱に入っていて、今の技術じゃ絶対に作れないようなものだった。
『ユカ、どうやらこれは映像ディスクみたいだな。古代文明ってのは、かなり進歩したテクノロジーだったみたいだ。これがあるということは、これを入れる場所がどこかにあるはずだぞ』
「これを入れる場所? この箱の中から出して、何かに入れるんですか??」
ソウイチロウさんが言うに、この映像ディスクと呼ばれる銀色の板は何かの道具らしい。
そしてこれを入れる場所がこの場所のどこかにあるというのだ。
ボク達はその辺りにあった不思議な機械を色々と押したり引っ張ったりねじったりしてみた。
すると、その度にランプが点灯したり、何かの音が聞こえたりしてきた。
「おや? これは何だろう……」
ホームさんが透明の薄いカバーのついた横のボタンを押すと、カバーが勝手にパかッと開いた。
そこの真ん中には丸いでっぱりがあり、その周りの形は丸い凹みになっていた。
「ひょっとして、ここにこの銀色の円盤を入れるのか?」
ボクは丸いでっぱりに引っ掛けるように銀色の円盤を入れた。
すると、開いたカバーは自動的に閉じ、中でボクの置いた円盤が回転を始めた。
「コレで合ってたみたいだ!」
ボク達が先程、黄金巨神ダルダロスと破械神バロールの戦いを見ていた平たい水晶に別の絵が映った。
「これは……一体何だ?」
ボク達の見たものは、何かの形で、それが次々と色が塗り替えられたり、また別の色に変わる不思議なモノだった。
『ソウイチロウさん、これ……何だかわかりますか?』
『これは……おそらく、戦闘記録のデータディスクだな。ここに映っているのは多分世界地図、そして色がついている場所はそれぞれの国だと考えていいだろう』
やはり専門用語が多くてわかりにくい……。
『すみません、もう少しわかりやすくお願いします……』
『仕方ないな、つまり……これは、世界地図といってこの世界全体を絵にしたもので、赤と青の二つの国があってそれがお互い戦った勢力図がどんどん塗り替えられている記録ってことだ。大昔の戦争でどちらの国がどれだけの土地を手に入れたかの記録と言えば伝わるかな……』
なるほど。つまり、これは大昔の時代に戦った二つの大きな国がどれだけ勝った負けたの記録と考えれば良いのか。
「おや、この辺りの地形、今とあまり変わらないねェ」
「エントラ様、これが何かわかるんですか?」
「まあ、おおよそは想像がつくねェ。妾は昔、住んでいた家でこれと同じようなモノを見たことがあるからねェ」
そう言えば大魔女エントラ様はアポカリプス一族という、門番の一族と呼ばれる大昔から存在する一族だった。
「つまり、この世界地図は今のものとは大きく異なっているけど、かつての世界を映している。そして、この二つの色は二つの大国が争った記録……と考えれば良いんだろうねェ」
流石は大魔女エントラ様だ。
ボクはソウイチロウさんが教えてくれたからこれが何かわかったが、彼女は何のヒントも無しにこの動く絵が何だったのかを完全に把握していた。




