579 開かない扉
ボクがマップチェンジスキルで作った橋は、何分経っても消える様子はなかった。
「これって……これならあの小島まで行けるかもしれない!」
ボクはみんなの先頭に立って、マップチェンジスキルで作った橋を歩いた。
そして大魔女エントラ様やアンさんの魔法がかき消されたマジックキャンセラーのある辺りまで歩いたが、特に何の以上も感じられなかった。
「何じゃ、やはりここの辺りに来ると、身体からごっそりと力が抜けてしまうわい」
「どうやらここは妾達みたいな魔力の強い者にはタブーみたいだねェ」
「お師匠様……私も力が入らない……ですわ」
どうやらこのマジックキャンセラーが発動している中で体調が変わらないのはエリアさん、ホームさん、ボクだけみたいだ。
フロアさんやサラサさん、ウルツヤ様も何か体調の不調を感じているようだ。
エリアさんとボクの魔力は創世神の力、そしてホームさんは生まれつき魔力を持たないので影響が出ていないらしい。
「ユカのスキルだけはこのマジックキャンセラーの影響を受けない、つまりはユカのスキルって魔法ではないってコトみたいだねェ」
大魔女エントラ様が何かを考えているようだ。
「もうちょっとで答えが出そうなんだよねェ。ユカのスキル、その正体が……」
「ボクのスキルの正体? 何ですかそれ」
「あと少しってとこなんだよねェ。何か出そうで出ない、今モヤモヤしてるってとこだからねェ」
……ボク達は橋を渡り、空の離れ小島まで到着した。
そこは数人が入れるくらいの小さな祠のような場所だった。
「救い主、ここ言い伝えの場所。この扉、誰も入ることできない」
ボク達の目の前にあったのは不思議な金属で作られた扉だった。
どこにもドアノブや凹み等が見られない、ツヤっとした扉は開きそうな場所が無かった。
「マジックキャンセラーの中じゃこの扉を魔法で壊したりこじ開けたり出来ないのよねェ」
「ワシもお手上げじゃ。どうやってこの中に入るのやら……」
大魔女エントラ様、アンさん、どちらもがこの扉の前で頭を悩ませている。
どこかに何かヒントは無いのだろうか……ボク達は扉の周りを調べてみた。
すると、何か扉とは違った場所に少し凹んだ場所があった。
「何だ……コレ?」
ボクが調べると、そこにあったのは何かをはめる穴のようだった。
ここにピッタリ合う形の何かを入れれば扉が開くのだろうか。
『ユカ、どうやらこの扉を開けるには何かの鍵になるアイテムが必要みたいだな』
『ソウイチロウさん、そのアイテムって何ですか?』
『私もよくわからないが、どうやらここには何かを入れないといけないらしい』
ボクはみんなにこのことを伝えた。
「みんな、どうやらこの扉を開けるには何かの道具をその穴に入れる必要があるみたいなんです」
「何かの道具、どうやら指輪かペンダントみたいだねェ……」
「フロア、これ……我の指輪?」
サラサさんが指輪を凹みに近づけると、指輪がいきなり光り出した。
「間違いない、その指輪はこの扉の鍵だったんだ!」
そして少し前に動かしたあの金属の馬と同じような光の模様が石や壁に走り、そのすぐ後……祠の扉はゆっくりと開いた。
『凄い! これは間違いなく古代文明の遺跡だ!』
ソウイチロウさんが驚いている。
こんな見たことのないような場所なのに、彼はこれが何なのかを理解しているようだ。
だが、そんなボク達は、それがぬか喜びだったことを思い知る。
入り口すぐの廊下を少し行った場所は、側面が崩れて先に行けない行き止まりになっていて、ボク達はそれ以上先に進めなかった。
「困ったねェ、魔法で吹き飛ばすにもマジックキャンセラーで無効化されるしねェ」
「ダメです、金属が硬すぎてボクの剣でも傷一つ付かないようです」
せっかくここまでこれたのに、この先に何があるのかわからないのか……。
『ユカ、お前のスキルならここを抜けることができるかもしれないぞ』
『え? ソウイチロウさん。ボクのスキル……ですか?』
ソウイチロウさんが言うにはどうやらこの先に行く方法があるらしい。




