574 集落に残る言い伝え
そして一晩飛び続け、次の日の朝ボク達はフワフワ族の集落に到着した。
すると、もうすでにボク達が来ることがわかっていたかのように集落の人達全員が集まってきていた。
「救い主様、フロア、サラサ、よく戻った……無事を神に感謝する」
「お久しぶりです、ウルツヤ様」
ボクはフワフワ族族長のウルツヤ様に挨拶をした。
「救い主、不思議なこと起きた。二人、一人の中にいる」
族長様はボクの中にソウイチロウさんの意識が存在することに気が付いているようだ。
でも特にそこのことでボクの仲間にビックリする人はいなかった。
「まあ、ユカ様が二重人格みたいなモノってことですわね。記憶を失っていたユカ様とそうでない時の頼れるユカ様、私はどちらでも受け入れますわ」
ルームさんの言い方がイマイチ引っかかるが、ホームさんがそのことに苦笑いをし、大魔女エントラ様やアンさんはルームさんを生暖かい目で見ていた。
「まあ、そういうことだねェ。しかし族長さんは妾達が来ることがきちんとわかっていたようだねェ」
「アナタは? アナタ、すごい力感じる」
「あら、失礼したねェ。初めまして、妾はエントラ。巷では大魔女だの流星の魔女だのって名前の方が有名かねェ」
大魔女エントラ様の自己紹介を聞いた集落の人達全員が驚愕した。
「ま、まさか……ホント、いた!」
「災厄、破滅もたらす魔法使い」
「怒らせたら、村滅ぶ……」
集落の皆さんが全員ひれ伏し、とんでもない物を崇めるような態度を見せた。
「あらあら、どうやら妾の名前は悪いイメージで伝わっているみたいだねェ……」
「お師匠様、一体何をやったんですか!?」
「うーん、思い当たる節はないかねェ。まあ、一つ思い出したとしたら、ずっと昔にヘックスのバカと勘違いしてこの辺りにいた邪神竜と大ゲンカして山一つぶっ壊したくらいかねェ」
「おぬし、昔からロクなことしておらんのう……」
邪神竜って……ボク達が全員で頑張って倒したあのザッハークのことか!!
しかしあの邪神竜と一人だけで対等に戦えるって、この人は一体本当に何者なのだろうか……。
「災厄の魔女様、どうかご慈悲を……」
「だから若気の至りだってェ、今はあんなことしないからねェ。反省してるんだからあまり蒸し返さないで欲しいんだねェ」
族長ウルツヤ様がうやうやしく大魔女エントラ様にお辞儀をした。
「災厄の魔女様、救い主様いっしょにおられる、これは言い伝え本当言える」
「言い伝え? 何ですかそれ」
「救い主、大いなる知恵と魔力持つ者と共にこの地に訪れん。その時太古の天空の民の地への道示せ、その時黄金の翼、破壊もたらすものを切り裂かん」
どういう意味なのだろうか。
『ユカ、これはユカとエントラ様が一緒にここに来る時、古代人の天空人の末裔の土地に行き、そこで黄金のコンドルを手に入れることができるって意味だろう』
『黄金のコンドル? それって……前に話していたモノですか』
『ああ、その黄金のコンドルならあの巨大空中戦艦でも倒せるってことだと推察できるな。まあ私の憶測ではあるが』
言い伝えを聞いた大魔女エントラ様が何かに気が付いたらしい。
「聞いたことあるねェ。遥か昔に天空に住んでいた人達がいて、地に落ちた後、余所者を受け入れずに住んでいる場所があるって。まあ妾もそこまでは行ったこと無いからどんな場所かまではわからないけどねェ」
「ふむ、空を飛ぶとなればワシがおれば問題は無かろう。それに早く急がんと、あの空飛ぶ船がどんどん村や町を火の海にし続けるじゃろうて」
そういえばそうだ。
ボク達はどうにかあの巨大な空飛ぶ船を倒す方法を見つけないと。
『ユカ、こういう場所には意外に古代に関するヒントが有ったりするものだ。族長に言って何かを調べさせてもらおう』
『ソウイチロウさん、わかりました』
ボクはソウイチロウさんのアドバイス通り、族長ウルツヤ様にこの村で色々と調べものをしたいと伝えた




