55 チームワークの勝利!
マンティコアは水たまりに溜まった酒を舐めていた。コイツの足元を凍らせる事が出来れば、動きを止める事が出来る。
「ルーム! アイスストームをマンティコアの足元に頼む!」
「かしこまりましたわ! 食らいなさい!! ……アイス・ストーーーム!」
ルームは魔力量自体高いのだが、命中率が悪い。
それが彼女の長所を潰してしまっているのだ、しかし今はそれでいい。
想定通りマンティコアには直接アイスストームは当たらなかった。
酒を舐めていた程度のマンティコアですらルームの魔法は直接当たらなかったのだ。
「外れましたわ! なんでこんな時に!!」
「ルーム、大丈夫だ! それでいい」
「何故ですの? 慰めでしたら結構ですわ!!」
「違うっ! ヤツの足元を見ろ」
マンティコアは後ろ脚を水たまりごと凍らされていた、これが私の作戦だったのだ。
マンティコアは素早さが高く、後ろ脚での跳躍で一瞬のうちに獲物を狙えるのが特徴だ。
そしてその尻尾はサソリになっていて致死性の猛毒の針を刺してくる事もある。
私はそのヤツの尻尾と後ろ足を封じるのが目的だったのだ。
「これは……」
「ルーム、君のアイスストームの威力で凍らせる事が出来たんだ。君はやはり素晴らしい魔導士だよ!」
「私が……。そうですわ! 私こそは将来の大天才魔導士になるのですわ!」
マンティコアは凍り付いた尻尾を氷から引きはがそうとグルグルその場を回りだした、しかし後ろ足ごと凍らされているので上半身と前足だけでバタバタしている。
マンティコアは幸い炎のブレス等の攻撃方法は持っていないのだ。
「ルームちゃん、やるじゃないの。でも、アレじゃぁすぐに氷から出てしまうわねぇ」
マイルさんはマンティコアの方に向くと辺りの植物を見渡した。
「植物ならあーしがどうとでも使えるのよ! 茨の蔓よ、地面を這い目の前の獲物を捕らえろ! 茨の呪縛」
マイルさんの植物使いのスキルが発揮された!
マンティコアは前足を水たまりの周囲の植物から伸びた茨によって絡め取られ、身動きが出来なくなっていた。
「商隊のみんな! 弓をヤツの顔めがけて討つんだよ!!」
「マイル様! 承知いたしました!!」
商隊の弓使いがマンティコアの顔めがけて弓を放った。
その矢は数本はなたれ、動けなかったマンティコアは両目を射抜かれて大声で吠えた!
「ギョガガガガァァアアアアア!!」
動けないマンティコアは目を失い体の自由も奪われ、凶悪なモンスターから狩られるだけの獲物に落ちぶれた。しかしそれでも体力はまだかなりのものである。
もし尻尾や後ろ足の氷漬けや茨の鎖を引きちぎった場合は十分に人間を蹂躙するだけの力は持っている。
流石はBクラスモンスターである。コイツは確実に仕留めなくては安心できない。
「ルーム! まだMPは残っているか?」
「心配ご無用ですわ! 先程の間にマジックポーションでMPは回復済みですわ!」
「そうか、それなら全部の魔力をつぎ込んで最大級のサンダーボルトを撃てるか?」
「サンダーボルトですか、お任せあれですわ!」
これで勝てる!マンティコアの凍り付いた足元の氷は少しずつ溶け出して水に戻ってきていた。
この水たまりにサンダーボルトをぶちかませば感電して今度こそオシマイだ!
「サンダァァァァア! ボルトォォォォォ!!!」
ルームの放った渾身のサンダーボルトは水たまりに足を取られたままのマンティコアの全身を迸った!! これを食らえばどんな生き物でも無事ではいられまい!
「ギャアアアアム!」
マンティコアは液体にまみれた全身に数10万ボルトに相当する高圧電流を食らい、絶叫しながらゆっくり横に倒れた。
「ホーム! マンティコアの首を切り落としてくれ!」
「ユカ様、了解です!」
これだけ絶大の体力を持ったモンスターは死んだと思っていても気絶しただけの場合がある。
それなので確実に首を切り落として二度と立ち上がれないようにしなくては安心できないのだ。
「覚悟しろぉぉぉ!!」
ザシュッ!!
ホームの先祖伝来の名剣による会心の一閃はマンティコアの首を一刀の下に断ち切った!!