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559 あの紫の服のガキ、許さない!

◆◆◆


 基本えこひいきはしない。

 なぜなら可哀そうだから。


 あたしのお下僕(ともだち)になる子はみんな可愛がってあげないと、あたしがえこひいきされてたからそういうのは嫌なの。


 でも、特別扱いはえこひいきとは違う。


 今あたしの目の前にいるあの双子の狼、

 あの子達の可愛さは特別扱いにしても仕方がない。


 あたしのお下僕(ともだち)にしたら、特別扱いで絶対に可愛がってあげたい。

 せっかく兄妹なんだったら、二匹とも一緒に可愛がってあげないと。


「可愛い、あの子達頂戴。嫌って言っても……貰っちゃうけどね!」


 あの子たちだって、ユカなんて人間達よりもあたしと一緒にいた方が絶対に幸せなのよ。


「フフフ、さあ……貰っちゃお」


 あたしの髪の毛は特殊スキルでどこまでも伸ばして鞭のように使えるのよ。

 そしてこの髪の毛の鞭はあたしの身体の一部、つまりあたしは生き物に触れればどんな相手でもお下僕(ともだち)にできちゃうの。

 人間は嫌いだからお下僕(ともだち)にはせず殺しちゃうけどね!


「ハハハハ、あたしの髪の鞭はこんな使い方もできるのよ」

「キャオオオォォーン!」


 あたしの髪の鞭は白い女の子の狼を捕らえ、その身体にあたしの優しさを流しこんであげている。

 そう、あの子が真っ黒に染まった時、あたしのお下僕(ともだち)になるの。


「あたしの髪で出来た鞭はどんな生き物でも下僕(ともだち)にする事ができるのよ。さあ、あたしのお下僕(ともだち)になってアイツらを攻撃しなさい!」


 あの子何で嫌がるのかな?

 お兄ちゃんらしいのはムダな抵抗をしようとしているけど、そんなことしても苦しむだけよ。

 さっさと楽になっちゃえばいいのに。


「ムダだって言ってるのに、わからない子にはオシオキが必要ね」


 やっぱり飴と鞭は必要よね。

 優しさって時には厳しいことだから。

 あたしの優しさがわからない子にはしっかりオシオキしてあげないと。


「やっぱり兄妹なら仲良く一緒にいないとね、二匹ともあたしの忠実なお下僕(ともだち)にしてあげる!」

「ギャオオオォォンンッッ!」


 あたしは二匹とも髪の鞭で絡め取った。

 妹ちゃんの方はもう半分近く綺麗な黒に染まっている。

 さあ、お下僕(ともだち)になったら何て可愛い名前を付けてあげようかしら。


「ダメだ! このままではどんどん魔獣化してしまう!」

「ユカ、私があの子達を助けます……レザレクション!」


 嫌な光があの子を包む。

 せっかくあたしが黒く染めて上げているのに、あのクソ女汚い白に戻そうとしやがった。


「ムダだって言ってるのがわからないかな!?」


 あたしの髪の毛鞭は絶対にほどけないの。

 あの子達を真っ黒にするまでいつまでも染め続けてあげるわ。


「あの髪の毛を断ち切れば!」


 クソガキがあたしの自慢の髪を切りやがった。

 でもいくらでも再生できるのよ。


「あんなに雁字搦めだと、火の魔法も雷の魔法も使えませんわ!」

「そうねェ……エリアちゃんの浄化魔法を邪魔されないように身を守るだけでこっちも精一杯だねェ」


 何か言ってるみたいだけど、あの子達がお下僕(ともだち)になったら全員エサにしてあげるのは確定よ。

 そう、それはもう決まり切った結果なんだから。


「あきらめの悪い奴らね、そろそろくたばってその子達あたしに頂戴よっ!!」


 とりあえず邪魔する奴全員細かくしてエサにしやすいように別のお下僕(ともだち)にも手伝ってもらうためにあたしは大量に呼び寄せた。


「小娘が、少しおイタが過ぎるんじゃないかのう!」

「誰だ!?」


 何なの!? どこから声がするのよっ!


「天雷よ、ここに在れ!」

「ギャァァァッ!!!」


 何なの!? 何なの!? 何なのよぉぉぉぉ!!


 聞いてないわよ。

 ユカの仲間のメスガキ、まさかあんな奴に煮え湯を飲まされるなんて……。


 あのクソガキのせいであたしの計画がメチャクチャになってしまった!

 あのへんな紫の服を着たガキ、絶対に許さない。

 アイツのせいで、アイツのせいであたしはひどい目に遭わされてしまった。

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