558 トゥルゥーの考え
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余裕で終わるはずだったのにっ!
北東の村を滅ぼしたあたしはアナお姉様と合流するために東の村に向かうことにした。
村でお姉様と合流したら、城に帰って血浴みをしてからお姉様と甘い時間を過ごすはずだった……。
血浴み……?
「あ、血浴み用の処女をさらうの忘れてた。ここにいた人間ども全員殺しちゃったからなー」
まあ仕方ない、やっちゃったことを気にしても良いことないし。
そしてあたしはアナお姉様と合流するためにロック鳥に乗り、東の村に向かった。
……まさかあの村であんな奴らがいるなんてっ‼
村に到着したあたしはアナお姉様が滅ぼした村を上から眺めて楽しんでいた。
クズの人間どもがどんどんアンデッド化し、心地よい恐怖が伝わって来て素晴らしかったのに……アイツらが姿を現した。
アイツらとは救世主のユカとその仲間達だ。
アイツら、人間のくせにアナお姉様に逆らう愚かな連中だと思った。
アナお姉様の力ならあの程度の連中、あっと言う間に全滅できるはずだったし。
しかしあのババア、よりにもよってアナお姉様をひどい目にあわせていた。
ナマイキな人間のくせに、あのババアはお姉様の魔法をかき消して美しいアナお姉様を無惨な姿にしやがった!
可哀そうなアナお姉様。
しかしそこにブーコが姿を現した。
不本意だがアナお姉様を助けてくれるならそれでもいいかと思った。
それなのに今度はユカの仲間のクソガキの一人が、ブーコ相手に剣一本で圧勝していた。
何でなの!? 何でなの?? 何でなの!?!?!
ありえない……あんな強い人間がいるなんて、ブーコがなすすべもなくクソガキにやられてしまっていた。
でも反対に考えると、アナお姉様もブーコも勝てなかったあの救世主ユカとその仲間達を全滅させれば、あたしが一番凄いってアビスお姉様に褒めてもらえる。
これはチャンスだと思ったあたしは、ロック鳥に乗ったままアイツの近くに行って挑発してやった。
「……へぇ。面白い芸を見せてくれるじゃない」
「誰だ!?」
ユカ達があたしを見上げてる。
そうよ。強者、支配者は常に上から見下ろすモノなの。
「あら、アナお姉様はまだしも……ブーコお姉様もだらしないわね。それじゃああたしがアンタ達を倒したらお姉様に褒めてもらえるのかしら」
いくらアイツらが強いと言っても、あたしは大量の下僕を作ることができる。
そのお下僕に襲わせればあんな連中あっという間にゴミクズになるはずだった。
「だからお前は誰なんだ!」
「あ、申し遅れましたわ。あたしトゥルゥー、アビスお姉様の忠実な妹ですわ。御機嫌よう」
名前も知らない相手に殺されるのも可哀そうだし、あたしが絶対的に強かったと思い知ってもらうためにあたしはユカ達に名前を教えてあげた。
ああ、あたしってなんて優しいのかしら。
「折角名乗っておいて何ですが、死んでもらえますか? そろそろこの子達のエサの時間なのでついでにエサになってもらうと嬉しいんですが」
殺すことに理由まであげる、なんて慈悲深いとおもわれるでしょうね。
そしてあたしはお下僕を呼んでユカ達を歓迎してあげることにした。
「さあ、あたしのお下僕のみんな。エサの時間よ」
あたしはお下僕の種類を選ばない、どんな子でもあたしのお下僕にしてあげるから。
そのお下僕を総動員してユカ達を襲わせた。
しかしアイツら、あたしの呼んだお下僕を全員でいじめた。
なんて奴らなの! 大人しく殺されてエサになる優しさはアイツらには全くないっていうの!?
「ひどーい! あたしのお下僕をそんなにいじめて楽しいの!?」
「黙れ! この外道っ」
「そんな事言っちゃうんだ……あ、そうだ……そこにいる狼の子、可愛いわね、あたしに頂戴。お下僕にしてあげる……」
アイツらの連れていた可愛い双子の狼がとっても可愛い!
あの子達、あたしの中でも特別に可愛がってあげたくなったので、何が何でも手に入れたくなった。




