555 髪の毛の鞭
魔獣使いのトゥルゥーは双子の狼シートとシーツの二匹を見てニヤニヤと笑っている。
「可愛い、あの子達頂戴。嫌って言っても……貰っちゃうけどね!」
そう言うと彼女は自らの髪の毛をスルスルと長く伸ばし始めた。
『ユカ、気をつけろ! あの魔獣使いは私の知るドークツなんてヤツよりよほど強敵だぞ』
ソウイチロウさんが忠告する。
どうやら以前彼が戦った魔獣使いより、今目の前にいるトゥルゥーという少女の方がよほど強いということだ。
「フフフ、さあ……貰っちゃお」
そう言うとトゥルゥーは巨大な何本もの鞭を振るい、ボク達を攻撃してきた。
いや、鞭に見えたが……意外!それは髪の毛ッ!
なんとトゥルゥーは自らの髪の毛を伸ばし、何本もの鞭のようにして振るってきた!
「ギャハハハハ、あたしの髪の鞭はこんな使い方もできるのよ」
「キャオオオォォーン!」
トゥルゥーの髪の鞭はシーツの身体を捕らえた。
彼女の髪の巻き付いた場所からどんどんシーツの身体が黒く染まっていく。
「あたしの髪で出来た鞭はどんな生き物でも下僕にする事ができるのよ。さあ、あたしのお下僕になってアイツらを攻撃しなさい!」
シーツは必死で抵抗をしている。
シートもその身体をどうにか持って行かれないように必死で引っ張ろうとしている。
「ムダだって言ってるのに、わからない子にはオシオキが必要ね」
トゥルゥーはそう言うとさらに髪の毛の鞭を増やし、シートも絡め取ってしまった。
「やっぱり兄妹なら仲良く一緒にいないとね、二匹ともあたしの忠実なお下僕にしてあげる!」
「ギャオオオォォンンッッ!」
なんとシートもトゥルゥーの髪の毛鞭に捕らえられてしまった。
そしてどんどん身体が黒く染まっていく。
シーツの方はもう身体の半分近くが黒く染まり、目の色が真っ赤に変わっている。
「ダメだ! このままではどんどん魔獣化してしまう!」
「ユカ、私があの子達を助けます……レザレクション!」
エリアさんがシートとシーツの双子に触れ、黒く染まりつつあった身体はだんだん白く浄化されていた。
「ムダだって言ってるのがわからないかな!?」
しかし、浄化をしてもその度に髪の毛に絡みつかれた場所からどんどん黒く染まっていくいたちごっこだ。
「あの髪の毛を断ち切れば!」
ホームさんが聖剣でトゥルゥーの髪の毛鞭を断ち切った。
だが、切られた髪の毛はそこから再び伸びてシートとシーツの身体に絡みつく。
「あんなに雁字搦めだと、火の魔法も雷の魔法も使えませんわ!」
「そうねェ……エリアちゃんの浄化魔法を邪魔されないように身を守るだけでこっちも精一杯だねェ」
大魔女エントラ様とルームさんは浄化魔法を使うエリアさんを守るだけで精いっぱいだ。
このままではジリ貧、根負けしたらシートとシーツの二匹が魔獣化してボク達の敵になってしまう……。
どうすれば良いんだ……この状況では人数が足りなくてシートとシーツを守るのも難しくなってくる。
その上トゥルゥーは髪の毛鞭を振るいながらも、どんどん影から魔獣を生み出してくるのでボクも魔獣退治で手いっぱいだ。
「あきらめの悪い奴らね、そろそろくたばってその子達あたしに頂戴よっ!!」
トゥルゥーはさらに魔獣を増やし、一気にボク達を潰そうとした。
その時!
「小娘が、少しおイタが過ぎるんじゃないかのう!」
「誰よッ!?」
「天雷よ、ここに在れ!」
「ギャァァァッ!!!」
この声は!
「何やら様子がおかしいと思ってこの辺りを探っておったのじゃが、大当たりだったようじゃのう」
「ユカさん、動物のことなら俺に任せろ!」
「我、手助け……する」
「アンさん……それに、フロアさんとサラサさんも……」
思わぬ救援が上空から現れた。
天雷で怯んだトゥルゥーの髪の毛をホームさんが断ち切り、シートとシーツの二匹は髪の毛の呪縛から逃れることができた。
「よくもシートとシーツを苦しめてくれたな! 絶対に許さないぞ!」
「それはこっちのセリフよ! よくもあたしの下僕を作る計画を!」
ここから一旦仕切り直しだ。
どうにかあの魔獣使いのトゥルゥーを倒さないと!!




