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554 邪悪な魔獣使い

 先祖である魔法王テラスの杖を高く掲げたルームさんは詠唱を終えると光の魔法で鋭い矢を数十本生み出した。


「スターライトアローレイン!」


 光の矢は空高く放たれ、その後追尾した矢は次々とゾンビを貫いて消滅させていった。


「ギャガアアッ」

「グゲェ」

「ゲギョゲギョッ!!」


 ゾンビが次々と姿を消していく。


『まるで昔のロボットアニメのミサイル追撃シーンだな……確かウチのゲームの音楽やってくれた先生の作品でこんなのがあった覚えがある』


 たまにソウイチロウさんのいうことは理解できない。

 でも光の矢で次々とゾンビやアンデッドが消滅していくのは圧巻だ。


 数分もせず村にいたゾンビは一匹残らず姿を消した。


「まあ、ざっとこんなものですわ」


 ルームさんがドヤ顔でボクに自慢している。

 大魔女エントラ様はそんなルームさんを見て苦笑いしていた。


「……へぇ。面白い芸を見せてくれるじゃない」

「誰だ!?」


 ボク達が声のする方を向くと、そこには魔獣を引きつれた魔族の幼い少女が姿を現した。


「あら、アナお姉様はまだしも……ブーコお姉様もだらしないわね。それじゃああたしがアンタ達を倒したらお姉様に褒めてもらえるのかしら」


 魔族の少女はボク達の質問に答えないようだ。


「だからお前は誰なんだ!」

「あ、申し遅れましたわ。あたしトゥルゥー、アビスお姉様の忠実な妹ですわ。御機嫌よう」


「折角名乗っておいて何ですが、死んでもらえますか? そろそろこの子達のエサの時間なのでついでにエサになってもらうと嬉しいんですが」


 話が支離滅裂だ。

 まるで会話がかみ合っていない。


 だが、あのトゥルゥーという魔族の少女が騎士団や兵士の人達の言っていた魔獣使いに違いない。

 彼女はニコニコしながら指をボク達に向けてきた。

 すると、トゥルゥーの影の中から何匹もの真っ黒な魔獣が姿を現した!


「さあ、あたしのお下僕(ともだち)のみんな。エサの時間よ」


 彼女の影の中から数十匹の魔獣が出現し、ボク達に襲いかかる!

 その種類は様々なもので、獣のようなモノ、鳥のようなモノ、そして虫のようなモノ、さらにトカゲのようなモノなど多岐に渡っている。


「あたし、お下僕(ともだち)は種類を選ばないの。だって差別すると可哀そうじゃない。せっかくあたしのお下僕(ともだち)になってくれるなら、誰にでも優しくしないと……だから、アンタ達も優しく手出しをしないでエサになって頂戴!」


 理屈がまるでメチャクチャだ。

 でも彼女の中ではその理屈が正しいのだろう。

 何よりもそれを証明しているのはトゥルゥーの態度だ。


 彼女は空中に浮いたままで取り巻きの大型鳥の魔獣に座っている。


 絶対の自信があるのだろうか、彼女は自ら動こうとはせず、魔獣を使ってボク達を攻撃させていた。


「まだ足りないかしら、それじゃあもっともっとお下僕(ともだち)呼んであげるね ギャハハハハッッ!!」


 トゥルゥーは大きな声で邪悪な笑いを上げている。

 丁寧な喋り方をしても、あれが彼女の本性なのだろう。


 魔獣は次々と彼女の影から現れた。

 ベノムホーネット、グレートボア、ミノタウロス、キマイラ、マンティコア、ツインヘッドベア、ソルジャーアント、コカトリス、バジリスク、キラータイガー、キングリザード……どれもB級、A級モンスターと呼ばれる奴らばかりだ。


 確かに魔獣がこの強さなら屈強な騎士団ですら壊滅しかねない。

 だがボク達はあの魔族の数万の大軍勢と戦った経験がある。

 それに比べればこの程度の数、相手にならない。


 ボク達はそれぞれが分散し、トゥルゥーの繰り出してきた魔獣を各個撃破していった。


「ひどーい! あたしのお下僕(ともだち)をそんなにいじめて楽しいの!?」

「黙れ! この外道っ」

「そんな事言っちゃうんだ……あ、そうだ……そこにいる狼の子、可愛いわね、あたしに頂戴。お下僕(ともだち)にしてあげる……」


 トゥルゥーはシートとシーツの二匹の狼を見かけるとニヤニヤと笑い出した。


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