549 今後の対策
どうやらボク達が倒さなければいけない相手は魔将軍アビス以外に三匹いるようだ。
バンパイアロード。
ダークリッチ。
魔獣使い。
これらの敵はアビスが手下にした元人間だと考えた方が良いだろう。
『ユカ、私は以前魔獣使いと戦ったことがある。だが、今回の敵は間違いなくそれよりも強いだろうな』
『ソウイチロウさん、貴方は魔獣使いと戦ったことがあるんですか?』
『ああ、他には一応バンパイアロードほどではないが人間が魔族化したやつと戦ったこともある。だが、それも間違いなく今回の敵の方が上だろう』
『どうしてそう言い切れるんですか?』
ソウイチロウさんの言っていることは間違いなく当たっているとボクも思う。
でもなぜ今度の敵が、以前ソウイチロウさんがボクの身体で戦った相手よりも数段も強いのかの根拠は分からなかった。
『その根拠は、人間に魔族化の力を与えた相手が魔将軍アビスだということなんだ。つまり、魔族にも強さがあると考えると、その強さのベースになるのは眷属にする元の始祖がどれほどの強さかといったところだろう。そう考えるとあのアビスが力を与えた魔族が弱いわけがないというわけさ』
なるほど、始祖になる魔族の元々の強さが眷属の強さになると考えると、そんじょそこらの魔族よりも魔将軍アビス自らが力を与えた相手の方がよほど強くなるのは納得だ。
『ソウイチロウさん、魔獣使いって……どんな相手でしたか?』
『そうだな、私の戦った魔獣使いはドークツという奴だったが、B級かC級のモンスターを使う相手だった。それでも魔獣を使いこなしているというほどではなかったが、当時の私にとってはかなりの強敵だったってとこかな』
ソウイチロウさんが戦った魔獣使いはB級、C級クラスのモンスター使いだというらしい。
だが今度ボク達の戦う魔獣使いはA級モンスターを使いこなすと聞く。
つまりは、どう考えてもその魔獣使いはA級モンスターよりも強い相手だ。
だがボク達にも頼もしい仲間がいる。
フロアさんやサラサさんは獣使いの一族だと言える存在だ。
今はアンさんと一緒にフンワリ族の集落に向かっているはずなのでここにはいないが、魔獣使いと戦う際には強力な仲間として戦ってくれるだろう。
ダークリッチは強大な魔法を使いこなす闇の魔法使いだ。
だがこちらにも世界最強レベルの魔法使い、大魔女エントラ様とその弟子にあたるルームさんがいる。
魔法対決でいうなら相手にとって不足は無いはずだ。
バンパイアロードもボク達ならば倒せるはず。
ホームさんは聖剣魂の救済者を持っているので邪悪な力に侵された吸血鬼やその手下を倒せるし、本人も魔将軍パンデモニウムと対等に渡り合っただけの人類最強クラスの強さを持っている。
ボクもバンパイアロード相手なら勝てるだけのレベルはあるはずだし、エリアさんの浄化能力は吸血鬼を消滅させるだけの魔力がある。
つまり、今のボク達なら魔将軍アビスの手下を倒せるってわけだ。
「さて、妾達はどう動けばいいのかねェ」
「お師匠様、僕はまず騎士団の人達が逃げてきたって村に行った方が良いと思うんです」
「でももう誰も生き残っていないかもしれないけどねェ」
「もし……そうだったとしても、これ以上魔族の犠牲者を増やすわけにはいきません。さまよっている亡者がうろついているとするなら、彼らを倒して救ってあげたいのです」
ホームさんは死んでなお利用されている人達を救ってあげたいと言っている。
まあ死者がそのままうろついてさらに犠牲者を増やす可能性は十分に考えられるので、そいつ等を倒す必要性は十分にあるだろう。
「そうですね。ホーム、滅びた村の調査……貴方達にお願いできますか? ユカ様、ホーム達をよろしくお願い致します」
「はい、伯爵様。承知致しました!」
「ユカ様、頼みます……これ以上我が領で罪もない犠牲者を増やさないで下さい」
ゴーティ伯爵はこの事態を重く受け止めているらしい。
ボク達は伯爵に深々と頭を下げ、その後部屋から退室した。




