547 闇の姉妹達
◆◆◆
アビスお姉様の力は絶大だった。
お姉様は片手を掲げただけで、巨大な闇の玉を作り、その玉を地面に叩きつけて村のあった場所全てを消滅させた。
「すごい……流石はお姉様」
「そうよねー。でも、これだけの力があればアタシ達がやらなくてもお姉様一人だけで村を滅ぼせたんじゃないの?」
「ブーコって馬鹿ね、それじゃあわたし達の朝食にならなかったし、トゥルゥーも妹にならなかったでしょう」
そういえばそうだ。
アビスお姉様達が現れたから、今の魔族になったあたしがここにいる。
もしこれがお姉様一人だけだったらあたしはこんな満足することも無く、弱い人間として願いが叶ったことも知らずに消滅させられていたかもしれない……。
でも今となってはそんなことはどうでもいい。
あたしはお姉様達の妹になれて幸せだ。
お姉様の魔法によってあたしの下僕は村ともども消滅してしまった。
まあ、新しい下僕を作ればそれでいいかな。
「フフフ、アナタ達……帰るわよ」
「「「はい、お姉様」」」
あたしはお姉様に連れて行ってもらい、とても豪華な城に辿り着いた。
ここはとても居心地がいい。
人間の誰もいない城にはお姉様達の下級魔族の奴隷が働いていた。
「お姉様、あたしの下僕をこの城で用意してもいいでしょうか?」
「ええ、その辺りの森にいい子がいるわ。トゥルゥーの思うようにしなさい」
お姉様は優しい。
あたしがやりたいことを好きにさせてくれる。
住んでいた村の下僕は全て消滅したけど、ここでまた新しい下僕を作れば……あたしのために働いてくれるよね。
「そうそう。アナタ達、汚らわしい人間の血で汚れてしまったわね。少し早いけど血浴みをしましょう」
「「はい、お姉様」」
血浴み?
何のことかはわからないが、あたしはお姉様達について行くことにした。
そしてあたしは凄いものを見てしまった!
一面真っ赤なお風呂。
お風呂なんて貴族の贅沢品だと思っていたが、このお風呂はなんと真っ赤な血で湛えられている。
「アンタ……本当はこの血になる予定だったんだよ」
「ブーコ! いらないこと言わないで!!」
なんということなの……。
もしアナお姉様があたしの血を吸ってくれていなかったら、あたしも弱い人間のままこの血のお風呂の一部にされていたというの……。
「まあ、いいじゃない。結果としてはアタシ達の妹になったってわけでしょ。トゥルゥー、アタシの背中洗ってよ」
「はい、お姉様」
あたしはこのブーコという女、どうも気に入らない。
でもお姉様には違いが無いので、あたしはブーコの背中を洗ってあげることにした。
「あら、アナタ洗うの上手ね、気に入ったわ」
「は、はい。ありがとうございます」
ここは素直な妹のフリをしておこう。
人間だった時から相手に合わせるのは得意だった。
「アナタ達、血浴みが終わったらこちらにいらっしゃい」
「「「はい、お姉様」」」
お風呂を出たあたしは、アナお姉様達に連れられ、豪華な衣裳部屋に連れて行ってもらった。
「何これ! 凄い……素敵っ!!」
そこにあったのは、村で一度も見たことの無いような豪華で美しい大量の服だった。
こんな服を着れるなんて、あたしは本当に貴族になったような気分だった。
「さあ、服を着替えたら……アナタ達にはしてもらうことがあるからね。」
「「「はい、お姉様」」」
あたし達はお姉様に呼ばれ、城の豪華な玉座の間に行った。
「よく来てくれたわね。それじゃあ今後の計画を話すわよ」
「「「はい、お姉様」」」
「アナタ達、これから全員でより多くの災厄と不幸を生み出すのよ。まずは手始めにこの辺りの村を手当たり次第に滅ぼそうかしら……」
「はい、お姉様! 是非ともあたしにやらせてください!」
「えー、アタシだって一人で出来るのにー」
アビスお姉様は怪しい微笑みを見せた。
「そうね、それじゃあアナとトゥルゥー、それとブーコとで競争してごらんなさい。勝てた方に素晴らしいご褒美をあげるわ」
「「「はい、お姉様!」」」
アナお姉様のためにもあのブーコに負けるわけにはいかない。
頑張って人間達の村を滅ぼして……アビスお姉様にご褒美をもらうのよ!




