546 下僕(ともだち)
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お姉様が命令をくれた。
あたしにここにいる村人を全員殺せと言っている。
「トゥルゥーちゃん、どうしたの!?」
「あなた、そんなことできる子じゃないわよね……」
「いつもの優しいトゥルゥーちゃんに戻って!!」
煩い。
お前達人間がどうなろうと知ったことじゃない。
あたしにとってはお前らよりも、下僕の方がよほど大切だ。
下僕、それはこの村にいる家畜達のことだ。
あたしは人間を相手しているより……この子達と一緒にいる方が、よほど心が安らいだ。
時々、どうしようもなく気分がグチャグチャな時は、この下僕を叩き殺す。
この子達はあたしに逆らえない。
だからあたしは時々ひよこや犬や猫を殺して別の下僕のエサに混ぜてやった。
そうしてあたしはこの子達を支配した。
そう、あの子達に人間を殺させよう。
あたしがわざわざ疲れることをする必要なんてない。
「どうしたの? 殺せないならアタシが手伝ってあげてもいいわよ」
「ブーコ、出しゃばらないで!」
お姉様達が言い争いをしている。
アナお姉様がケンカをしている相手は、ブーコというらしい。
「ぷぷっ……」
「何がおかしいの? アンタ新入りでしょうが!」
ブーコって……それ、あたしの一番最近に殺した下僕の名前じゃない。
豚のブーコ、あたしは名前を聞いてそれを思い出した。
「い、いえ。これから皆殺しにする人間どものことを考えたら楽しくなってきたんです」
「そう、それなら一人で出来るのかしら?」
「ええ、お任せください。アナお姉様」
あたしはそう言うと指笛を吹いた。
指笛はあたしが下僕を呼んだり従わせるための手段だ。
しかし、この指笛……どうやら今までと様子が違った。
「「「ギャアアア! グギャアアア!!」」」
けたたましく狂暴化したあたしの下僕が、檻や小屋をブチやぶってあたしの元に駆け付けた。
下僕はみんな相当興奮している。
「よく来てくれたわね、ありがと」
あたしは普段家畜の世話をするように、下僕に軽くキスをしてあげた。
「へえ、あの娘……なかなかの拾い物じゃない。後でアナを褒めてあげないとね」
お姉様達の一番偉い方があたしのことを見てくれている。
そして、あたしがキスをした下僕は……凄まじい変化を見せた。
「え……何?? どうなってるの!?」
あたしがキスをした家畜達は、黒い空気を体に取り込み、その大きさは数倍にも膨れ上がり、全身が黒や灰色に変わっていった。
そして、鋭い牙や角が生え、凄まじい雄たけびを上げながら中央に集められた村人の元に向かい、突進した。
「「「キャアアァ―!!」」」
そして殺戮が始まった。
あたしの魔力は家畜を魔獣化させ、魔獣達は次々と村人を噛み砕き、踏みつぶし、引き千切っていった。
「素晴らしいわ! トゥルゥー……アナタの力、アタシちゃんの想像以上よ!」
「お姉様……」
お姉様があたしを褒めてくれている。
今までこれ程あたしのことを認めて褒めてくれた相手はいなかった。
これまではみんな、あたしのことを同情の目で見ていただけだった。
でももう違う。
あたしはお姉様に必要とされている。
それならその期待に応えたい。
あたしは一人で出来ることをアピールするために下僕に指示した。
「さあ、あたしの可愛いお下僕のみんな。この村を滅茶苦茶に壊しちゃいなさい!」
あたしのお願いを聞いた下僕は、その持てあます力で次々と村を壊していった。
しかしまさか、あの子たちが人間を食べた後炎や吹雪を吐いたり雷を呼ぶほどパワーアップするとは想定外だった。
そして一時間もしない間に、村だった場所は建物すら残らない焼け野原になってしまった。
「あら、少しやりすぎてしまったみたいね。まあいいわ、それならここを更地にしてしまいましょう」
「アビスお姉様、お一人で大丈夫ですか?」
「ええ、アナ……アナタ達は怪我しないように空に飛んでいなさい」
「はい」
そしてあたしはアナお姉様に抱えてもらい、上空からアビスお姉様の力を見た。
「さあ、跡形もなく消え去りなさいっ! キャハハハハハッ!!」
アビスお姉様はその絶大な魔力で、村のあった場所を一瞬で消し去った。




