53 マンティコア出現!
商隊の準備が完了した。これでいよいよ盗賊退治に出る事が出来る。
「よーし、完璧だ! アンタたち。よく頑張ったね」
「ハイ! マイル様。我々は貴女の為なら何でもいたします! どうぞご命令を!」
これは『旅の商人軍団が仲間になった』といったところだろうか。“ドラゴンズスターⅣ”では『行商人コルネオ』の章で困った商人達を助ける事で信頼を得たコルネオの為にいつでも駆けつける商人軍団を呼び出せるシステムを作った事があったが、これはリアルにそれを地で行くものだろう。まさに情けは人の為ならずである。
「マイルさん、もう準備は大丈夫ですか?」
「ああユカ、これで確実にオトリとしても本物としても使えるよ!」
マイルさんのしゃべり方は普段のものに戻っていた。今はこのしゃべり方でももう商隊は誰一人として違和感を感じていないようだ。
「ユカ様、僕達も準備が完了しました、地図から盗賊の出没地点の絞り込みは出来ています」
「ユカ様、私も準備完了ですわ! マジックポーションはストックしておきましたので、MP切れで戦えなくなる事はございませんわ!」
レジデンス兄妹も準備は完了していた。これで盗賊退治に出発できる!
「よーし! モンスターと盗賊退治に出発だー!!」
「「「オー!」」」
みんなが一斉に掛け声を上げた、テンションはMAX、気合は十分だ。
◆
私達は街道を沿う形で伯爵の城下町であるコミエンソの町に向かう事にした。商隊は実際に収穫祭に使う物を大量に詰め込み、町で荷下ろしをする予定だ。
「ユカ様、そろそろ危険地域です。領民の声をもとに調べた地図によるとこの辺りにモンスターが出没したそうです」
「了解! みんな、気を付けるんだ」
商隊は手に持った武器を握りしめながら移動を続けた。そして!
「ギャオーーーー!!」
モンスターが出現! これはマンティコアだ!
「お兄様、モンスターが出ましたわ!」
「わかったよ! ルーム」
ホームは先祖伝来の名剣でマンティコアの前に踏み出した。
「いくぞ! 僕は騎士見習いのホーム・レジデンスだ! 覚悟」
ホームは誇り高き騎士に倣い、名乗りを上げてからマンティコアに切りつけた。
しかしマンティコアはひらりと身をかわした、やはりハイレベルモンスターと言えよう。
「お兄様! どいて! そいつ殺せない!!」
今度はルームが杖を構えた。あくまでも二人とも正攻法である。
「ファイヤーボール!」
ファイヤーボールは火の基本魔法である。まあモンスターは火に弱いのがセオリーなので戦い方としては間違ってはいない。
だがマンティコアはそれも難なく避けた。
「何故ですの!? 私の魔法が避けられた?」
「僕の剣技も通用しない! クソッ!」
それも仕方がない事である、二人が戦った事のあるのはゴブリンやコボルト、ハイオークといったまだ人間が武器を持てばどうにか倒せるレベルのモンスターである。
しかしこのマンティコアはB級モンスター、“ドラゴンズスターシリーズ”で例えるならば序盤のボス、中盤から終盤のフィールドやダンジョンの雑魚モンスターといった強さである。
言うならばライオンやトラや熊を人間が倒すようなものである。
これを正攻法で倒せるのはプロレスラーか牛殺しの空手家、じゃんけんのチョキでグーに勝てる人類最強のグラップラーくらいのものである。
「ホーム、ルーム! こいつに正攻法は無理だ! ボクに任せろ!」
「「ユカ様!」」
マンティコアには毒耐性、毒吸収能力がある、毒沼を利用した戦い方はむしろ奴に有利な結果を与えるだけだ。なので私は別の手を考えた。
「マンティコアの足元の地面を水たまりにチェンジ!!」
「!」
マンティコアは突然の出来事に怯んだ、そのすきを狙い私はマンティコアの片足を遺跡の剣で切り裂いた!
「ゴァァァァァア!」
マンティコアが痛そうに叫び声をあげている。しかしこのままではまだ致命傷にはならなかった!