538 お姉様が二人!?
◆◆◆
アビスお姉様の寝室に入ったわたしは、あまりの豪華さにビックリした。
天蓋付きのベッドなんて、村一番の金持ちだった私でも見たことが無かったものだ。
お姉様の寝室にあったベッドはとても大きく、白とベルベッドが美しいモノだった。
「どう? 素敵でしょう」
「ハイ! お姉様。とても……素晴らしいです」
「そう、アナタもわかるのね。このベッドの素晴らしさが」
このベッドからは、今着ている服からの人間どもの苦しみや憎しみを上回る悲痛な思いが伝わって来てとても気持ちがいい。
「はい、こんな素敵なベッドでお姉様と愛を語り合えるなんて最高です」
「フフフ、そうね。これはね……先程血浴みをした処女達の骨と皮で出来ているのよ」
お姉様は嬉しそうに説明してくれた。
なるほど、アレだけ大量の苦しみや憎しみが伝わってくる理由がよく分かった。
まあ絶対的強者であるわたしたち魔族が下等種である人間をどのように扱おうと、全てが許されること。
人間どもだって家畜を育てたり、死んだ家畜の骨や皮を使って寝具を作るくらいのことはしている、だから人間より優れたわたし達魔族が人間の死体をどうしようと問題は無い。
そしてわたしがこのベッドを気に入ったのは、お姉様が使っていることもだが……安易に頭蓋骨や肋骨をそのまま使うような悪趣味なセンスではなく、骨を透かして加工していることだった。
透かした骨彫刻をいくつも重ねることで不思議な模様が生まれ、そしてベッドとしての強度もしっかりと保たれる。
その上、若い処女の皮はすべすべでサラサラ、張りも良くレベルの高い加工をされているので芸術品や調度品としても最高級の品質だ。
「素敵……アタシお姉様とこんな場所で愛し合えるのね」
ブーコは相変わらずセンスが無い。
そんな当たり前のことを言ってお姉様が喜ぶと思っているの?
「フフフ、そうね……夜は長いわ。さあ、たっぷり愛し合いましょう……」
なんでなの!
お姉様の素晴らしい芸術的なセンスを褒めたわたしよりも、お姉様は欲にまみれてすぐにそれを叶えたいってブーコの方が好きなの!?
「あーん、ずるい、わたしも愛してくださいー」
「勿論よ、アナ……」
お姉様に見つめられると、やはりブーコへの憎しみや嫉妬が上書きされてしまう……。
そして服を脱いだわたし達はベッドでお姉様に可愛がっていただいた。
でもブーコと一緒というのがやはりどうも癪に障る。
お姉様は一人だけなのに……。
「あら、アナ。なにか不満そうね。言ってごらんなさい」
「お姉様、わたしお姉様と一対一で愛し合いたいの」
「フフフ、欲張りさんね……良いわ、それなら少し待ってて」
わたしが懇願したことでお姉様はブーコを追い出してくれると思った。
しかしお姉様の行動はわたしの予想を大きく上回るものだった。
お姉様は……なんといきなり自らの身体に爪を立てた。
「フフフ……」
バリバリバリバリッ……!
お姉様は爪を立てた体を傷つけ、身体を引き裂こうとしている。
「キャアアアアーッ! お姉様ぁぁぁぁっ!!」
なんということなの!?
お姉様はその美しい体をいきなり傷つけ、身体を二つに引き裂いた。
人間と違ってお姉様がこの程度で死ぬわけはないのは分かっている、でもとても心臓に悪い……。
「「クスクスクス、ビックリした……?」」
半分に分かれたお姉様が二つの身体から同時に声を出している。
ビックリしたわたしが見ている目の前で、お姉様は引き裂いた体の半分側を再生した。
「「どう? お待たせ」」
「お姉……様!?」
なんと、お姉様は二つに引き裂いた体をどちらも再生させ、二人に分裂したのだ。
「「アナ、ブーコ、これなら同時に二人共愛してあげられるでしょう」」
「「お姉様……」」
そしてわたしとブーコはケンカすることなく、お姉様と愛し合うことができた。
最後には何故か二人同士でではなく、四人全員になってしまったのは……まあ流れ的に仕方ないか。




