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537 悲しみと憎しみで出来た衣装

◆◆◆


「お姉様、これは……?」

「フフフ、気に入っていただけたかしら?」

「素敵です! わたしこんな素敵な衣装、初めて見ました!!」

「そう、それはよかったわ。可愛い妹のためですもの」


 お姉様が血浴みの後、わたしに用意してくれたのはとても豪華な衣装だった。

 衣装からは人間の恨みの感情がひしひしと伝わってくる。

 それがとても心地いい。


「これは一体?」

「フフフ、これはね……領民を苦しめて絞るところまで絞り切って贅沢をしていたシャトー侯爵夫人が持っていた服なのよ。この服は飢えて何も食べられずに死んでいった人間達の悲しみや憎しみで出来ているの。もちろん薄汚い人間が袖を通したことの無い未使用のモノよ」

「最高ですわ! 最高級の贅沢は下民共の苦しみの上に成り立っているのね!」


 わたしはようやく闇の貴族の立ち振る舞いというものが理解出来てきたところだ。


「フフフ、アナタもわかってきたわね。そうよ、美しさとは……虫けらの悲しみや憎しみの上に成り立つものなの。さあ、いつまでもあんな薄汚い村娘の服なんて着ていないで、アナに相応しい服を身につけなさい」

「はい、お姉様」


 お姉様は下僕どもに命じ、わたしに素晴らしい衣装を着せてくれた。

 本当に高貴な女は自ら服を着ない、下僕が常に服を着させるのだという。

 わたしは慣れていない下僕どもを打ち据えながら服を着させた。

 この下僕は下級の女魔族らしい。

 魔族の中にも階級があり、わたしはお姉様と同じ最上位、この下僕どもは生まれてから死ぬまで立ち位置の変わらない低位魔族だ。


「フフフ、素敵よ。まさに闇の貴族に相応しい服装になったわね」

「はい、お姉様……」


 わたしは闇の貴族。

 常に最高のモノを与えられるのが当たり前の存在。

 もう二度とあんな村娘の服なんて汚らわしいモノを触りたくもないし着る気も無い。


「アノ……コレハ? ドウイタシマショウカ?」

「いらない。そんなゴミ」


 わたしは指先から黒い炎の魔法で下僕の持っていた元々着ていた服を燃やした。


「ギャアアアアァアアッッ!」


 服を持っていた低位魔族の女が黒い炎に巻き込まれて服もろとも消し炭になった。

 でもわたしには何の感情も無かった。

 所詮お姉様以外の存在は利用するものか、存在を許しているだけのものに過ぎない。


「良いわ。アナ……その冷酷さ、アタシちゃんの妹に相応しくなってきたわね」

「お姉様、ありがとうございます」


 お姉様は服を着替えたわたしに熱いキスをしてくれた。

 体が火照る。

 わたしの身体の奥底からお姉様が欲しくなる。


「お姉様……」


 しかしお姉様は何故か冷たい笑顔でわたしを見つめていた。

 そして目線をそらすとその先には、忌まわしい彼女がいたのだ。


「お姉様、アタシ……こんな素敵な服、初めてよ」

「フフフ、ブーコ。アナタも可愛いわよ」


 なんと、お姉様に服をプレゼントしてもらったのはわたしだけではなかった。

 ブーコもお姉様に服をプレゼントしてもらっていたのだ。

 それに……何が忌々しかったって、あのそばかすであか抜けない芋臭い田舎娘に過ぎなかったブーコが、わたしと同じくらいの美少女になっていたのだ。


「ブーコ! アンタ何なのよそれ!」

「あら、お姉様はアタシにもっと美しくなりなさいと言ってくれたのよ。アタシはお姉様のおかげでアンタより美人になれたの。まあ、素材が良かったってことじゃない? アタシの方が身長高くてスタイル良かったし」


 マジで気に入らない。

 ブーコは、顔はイマイチだったがスタイルの良さと胸の大きさは村にいた時のわたしが嫉妬するくらいのものだった。

 それなのにスタイルも良くて胸も大きくて、それであのイマイチな顔があんな美少女になっているって……マジで気に入らない、アイツは絶対にいつか殺す。


「フフフ、可愛いわよ。アタシちゃんの妹達」

「「はい、お姉様……」」


 ダメだ、やはりお姉様に見つめられるとブーコへの殺意がお姉様への愛情に上書きされる……。


「さあ、夜は長いのよ。三人で楽しみましょう……」

「ハイ……」


 そしてわたしとブーコはお姉様の寝室に呼ばれた。

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