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536 生き血の風呂

このお風呂、実際にヨーロッパで歴史上存在したそうです……。

閲覧注意。

◆◆◆


 わたしの名前はアナ。

 アビスお姉様の忠実な部下でダークリッチと呼ばれる最上位魔族。


 アビスお姉様はわたしの全て。

 もしお姉様に死ねと言われればわたしは喜んで死ぬ。

 でも不死身の魔族なのでなかなか大変だろうけど(笑)


 アビスお姉様はわたしの住んでいた村に迷い込んできた人間の少女のフリをしていた。

 わたしが看病してあげると、お姉様はそのお礼にと素晴らしい世界を教えてくれた。


 そう、その日からわたしは人間ではなく、最上位魔族……ダークリッチになれた。

 それからは毎日が楽しい。

 人間の血と肉の味、絶望の感情、全てを踏みにじる快感。

 これらは全てお姉様が教えてくれた。


 今、わたしの目の前には、わたしをおねえちゃんと呼んでいた子供の首がない死体が転がっている。

 確か、弟……そう、コウって名前だったかしら。

 わたしはコウの頭を握りつぶして血まみれになった手を舐めた。


 美味しい……今までで一番美味しい!

 何でなの? わたしは転がっていた子供の死体を抱きかかえ、一心不乱に噛みついた。

 最高の味……その血も肉も全てがわたしを満足させる。


 でも……どうしてだろう。

 血の涙が止まらない……。


「クスクスクス……アナタもついに最後の一線を超えたわね。ようこそ、甘美な闇の世界へ……」

「お姉様……何で? 涙が止まらないです……」

「何も考えなくていいのよ、アナタは目の前の血肉を全て喰らい尽くすことで更に強く、美しくなれるから……」


 お姉様はやはり優しい。


「ハハハ、アタシなんてもう肉親を喰らうなんてことアンタより前に終わらせたけどね」


 コイツはブーコ。

 人間だった時は親友だったかもしれないけど、今は物凄く嫌なヤツだ。

 お姉様の寵愛はわたしだけのもののはずなのに、コイツは薄汚いゾンビからお姉様の力でバンパイアリーダーにクラスチェンジした。

 いつか絶対に殺してやる。


「フン、アンタなんて何も考えてない獣同然に、単に目の前にあった人間どもの肉をむさぼり食ってただけでしょう!」

「何だと! この……!」

「はいはい、二人共。ケンカはだーめ」

「「はい、お姉様……」」


 ダメだ、アビスお姉様に見つめられると、ブーコへの殺意よりもお姉様への愛情の方が優先されて全て忘れてしまう……。


 コウを骨まで残さず食べつくしたことで、わたしとブーコの住んでいた村は完全に滅んだ。

 お姉様が言うに、村はこのままにしておけばいいらしい。


「さあ二人共、帰るわよ」

「お姉様、どこへ?」

「フフフ、アタシちゃんの城よ」


 お姉様はあえて瞬間移動せず、空を飛んで城まで戻った。

 どうやら、空を飛ぶことで人間どもの村がどこにあるかを見せるためだろう。


 しばらく夜の闇を飛び、わたし達は無人の古城に到着した。

 この城からは多くの絶望や苦しみや恨み、悲しみに憎しみの感情が伝わってくる。


「着いたわ、ここがアタシちゃんの城。前はロビーネ男爵ってやつが住んでたみたいだけど、今は誰もいないからね」


 城のあちこちから拷問や処刑で苦しめられた人間の悪感情が漂ってきて心地が良い。

 そしてお姉様はわたし達を浴室に連れてきた。


「さあ、血浴みをしましょう……」

「血浴み?」


 わたし達はお姉様と一緒に浴室に入った。

 すると大きな風呂には人間の血が大量に湛えられていた。


「フフフフ、これは最上級の処女の生き血を集めたお風呂。さあ、恥ずかしがらずにこちらへ来なさいな……」

「ハイ……お姉様」

「あら、アタシもいるんですけど」


 ブーコ、ここでもわたしの邪魔をするの!?


「何でアンタもここにいるのよ!?」

「良いじゃない、みんなで楽しみましょう」


 ダメだ、お姉様に言われると……ブーコへの殺意が上書きされてしまう。

 そしてわたし達は三人で血の風呂を楽しみ、血の風呂から出たわたしはお姉様に身体を触ってもらった。


「どう、すべすべのお肌になったでしょう」

「はい、お姉様」


 お姉様は下僕を呼び、何かを持ってこさせた。


「さあ、アタシちゃんからのプレゼントよ。女の子は綺麗でないとね」

「こ……これは!」


 わたしはお姉様からとても素晴らしい贈り物を頂いた。

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