533 崩壊した村
グロ&胸糞注意。
完全にゾンビものの流れです。
◆◆◆
アンデッドの群れが少女のゾンビに引き連れられ、どんどんと村に侵入してくる。
「何だ? ……ギャアアアアッ!」
外が騒がしいので様子を見ようとした村人が、アンデッドに襲われた。
噛みつかれた村人が絶命し、その死体がゆっくりと動き出す。
一時間も経たないうちに村はゾンビに次々と襲われた。
犠牲者の数はどんどん増え、餌にされるモノと噛まれてゾンビ化する者の二種類に分かれていった。
「そうそう、これを見るのが楽しいのよ。人間だったモノがアタシちゃんの僕になって家族や友人を惨殺するのがね。キャハハハッ!」
「お姉様、わたし……いいこと思いつきました」
アナと呼ばれた元村長の娘は、邪悪な笑みを浮かべた。
「そう、アナ。アナタにはアタシちゃんの素敵なプレゼントをあげる、それを使って楽しいことをしてらっしゃいな」
「はい、お姉様。ありがとうございます」
アビスはアナを見つめ、熱く口づけをかわした。
口づけをされたアナの身体には、アビスの魔力の一部がみなぎっている。
「お姉様、これは?」
「アタシちゃんの魔力の一部よ。これでアナはアタシちゃんの使う魔法の一部が使えるようになったの。さあ、その魔法を使って楽しいショーを演じなさいな」
「はい、おねえさまの満足できるショーを演じてきますわ」
アナは魔法を使うとその場から姿を消した。
これはアビスの得意魔法、瞬間移動である。
アナは瞬間移動の魔法で元々の自身の家の閉じこもったままの自室に移動した。
「アナ、大変なのよ! 部屋に閉じこもっている場合じゃないわ」
アナの母親が部屋のドアを開ける。
ベッドに戻っていたアナは部屋の中からゆっくりと姿を見せた。
「どうしたの?」
「アナ、大変なのよ。村人がどんどん死者に食い殺されているの。アナタは弟を連れて逃げて! お母さんとお父さんは村の人達を助けないと」
「へぇ、そうなんだ」
「何のん気な事を言ってるの! この家は今、鍵を閉めてるから逃げてきた村人達がいるのよ。ここでみんな朝になるまでどうにか耐えるの。朝になったらすぐに弟を連れて逃げて!」
「そうなんだね、でもすでに遅いかもしれないわよ」
そう言うとアナはおぞましい表情を母親に見せた。
「ア……アナ、アナタ、ひょっとしてもうゾンビに……!?」
母親が手に持った箒でアナを叩いてきた。
「クスクスクス……わたしをあんな下等な僕と一緒にしないで。わたしは高貴な存在なのよ」
「ア…。アアアァ……」
アナの母親は変貌した自身の娘を見て気がおかしくなってしまった。
「さあ、お前はわたしの僕、ここにいる村人を全員殺しなさい」
「ハイ。わかりました、ご主人様」
母親はアナの魅了の魔法で完全な操り人形になってしまった。
そして壁にかけていた斧を手に取り、避難者の泣き叫ぶ子供の頭めがけて振り下ろす。
グチャッ!
何かを叩き潰した音が辺りに響いた。
「「「キャアアア―ッ!」」」
村長の家の中に逃げ込んでいた村人達は、目の前で起きた惨劇を見て絶叫している。
男達は必死でアナの母親を止めようとするが、魅了の魔法と能力強化をされた彼女の敵ではなく、どんどん肉片が散らばるだけだった。
「ダメだ、もうここもおしまいだっ」
村人が我慢しきれず、家の扉を開けて外に逃げようとした。
だが、家の扉の前にはアビスが立っている。
「こんばんは。良い夜ですわね、キャハハハハ」
「だ……誰だ! そこをのけよっ!」
「あら、レディーに対してその態度、失礼じゃない?」
アビスが一瞬目を光らせた。
すると、目から放たれた光は目の前にいた男の頭部を瞬時に消し去った。
ドサッ。
首の消えた男の死体が扉の前に倒れる。
もう、この村はどこにも逃げ場が無くなっていた。
神に祈るだけ無駄。
村人全員がなすすべもなく、アビスの手下に蹂躙されていった。
そして地図に載らない村は、その姿を消した。




