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529 飛び込んできた凶報

 ボクは母さんのせいで晒し者になっている。

 

 みんながボクに注目している。

 母さんがいきなりボクにどの女の子が好きなのかを聞いてきたためだ。

 この状況、誰か一人を選べと言われても、選べるわけがない。


 ルームさんは下をうつむいているし、エリアさんは何も話さないでボクを見ていた。

 ルーフはまたジトっとした目でボクを見ているし、大魔女エントラ様は薄笑いしながらボクを見ている。

 

 これで誰かを選べと言われても、言えるわけがない。

 誰かを選んだとして、残った人達の印象が悪くなってしまっては何とも言えない。


 困ったものだ。

 挙句には父さんもゴーティ伯爵も何も言わずにボクを見てるだけで、誰も助け船を出そうとはしてくれていない。


『ソウイチロウさん!』

『すまん、私もこの話はノータッチにさせてくれ』


 裏切者―!


 唯一の味方だと思ったソウイチロウさんが話に乗ってくれない。


 この状況だと、誰か一人を選ぶしか選択肢は無さそうだ。


 ボクの本音としては、ルームさんは実の妹のルーフと被って恋人とかというよりは妹みたいなものなので恋愛対象としては見れない。

 また、大魔女エントラ様は魅力的な女性ではあるが、あまりにも年が離れすぎているのと年下に見られる事から考えてやはり恋人対象とはとても言えない。


 そうなると……やはりここはエリアさんだということになる。


「ボクは……」


 その時、食堂に血相を変えて入ってきた人がいた。


「大変です! また遠くの村から全員姿が消えました!!」

「何だって!?」


 ボクの話は突然食堂に入ってきた人に遮られた。

 助かった……。


「それは聞き捨てならない話ですね。今度は何があったというのですか?」

「ゴーティ伯爵様、ウォール様、実は……遠方の村から忽然と住民が姿を消すという話がいくつも上がっていまして、それを確認に行った騎士団が命からがら逃げてきたのです」


 騎士団が逃げる。

 そんなことははっきり言って恥と同じだ。

 だがそれでも騎士団が逃げるしかないほど、状況は最悪だといえるのだろう。


「いきなり住民が姿を消したっていうのかねェ。それは奇妙な話だねェ」

「何だか……とても嫌な予感がします」

「ここで祭りを楽しんでいる場合じゃなさそうですね」


 ゴーティ伯爵、父さん、大魔女エントラ様、他にもみんながこの奇妙な現象について話をしている。


「皆さん、この話はここの中だけで留めておいてください。この騒ぎが村に広まると、大パニックが起きてしまいます」


「ではウォール村長は予定通り村祭りを開催してください。できるだけ盛大に祭りを盛り上げて……くれぐれもこの話が村人に漏れないようにお願いします」

「それでは伯爵様はどうされるのですか?」

「私は明日の朝一番に城に帰ります。どうやらこの一件、ここだけのことでは終わらなそうですから」


 父さんとゴーティ伯爵は村人全員失踪の事件に対し、それぞれの出来ることをすると話していた。


「父さん、ボクは村人の消えた村に行ってみることにします」

「そうか、ユカ。気をつけるのだぞ」

「僕もユカ様と一緒に行きます」

(わたくし)もついて行きますわ」

「私も……ユカと行きます」

「そうなると、(わらわ)も一緒に行くことになるかねェ」


 ボク達は今晩ゆっくり休み、明日の朝住民の失踪した村に向かうことになった。


 しかし失踪した村、何があったのだろう?


 ボクはとても嫌な予感がした。


 これはまさか……魔族の仕業だというのだろうか。


『ユカ、どうやら同じことを考えているようだな』

『ソウイチロウさん、これってやはり……』

『ああ、多分……魔族の生き残りというと、逃げたアイツだろうな』


 ボクはソウイチロウさんと同じことを考えていた。

 これが予測通りだとすると、更に被害は広まってしまう。

 一日でも早くこの問題を解決しなくては!

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