527 え!? お母様??
食堂には母さんとルームさん、ホームさん、それにエリアさんが座って待っていた。
ゴーティ伯爵は今、外の兵士達の食事を仕切っているので終わり次第すぐここに来る予定だそうだ。
「ユカ、あなた。もう準備は出来てますわよっ」
母さんはにこやかにルームさんと談笑している。
この二人、いつの間にこんなに仲良くなったのだろうか?
「おばさまを見た時、お母様が生き返ったのかと思いましたわ」
「おばさんも、ルームちゃんを見た時……ヴェッソーちゃんの小さい頃思い出してしまったわっ」
なるほど、ルームさんは母さんを見て、彼女の亡くなったお母さんそっくりだと思ったんだな。
◆◆◆
時間は少し遡る。
ユカが父親と一緒に倉庫に備蓄する食料をしまう準備をする前だ。
引っ越し作業が落ち着いたユカの母親、ウインドウの元に作業を手伝っていたホームとルームの二人が訪れ、彼女に挨拶をした。
「はじめまして、ユカ様のお母様。僕はゴーティ伯爵の息子、『ホーム・フォッシーナ・レジデンス』と申します」
「はじめまして、おばさま。私は同じくゴーティ伯爵の娘、『ルーム・フォッシーナ・レジデンス』と申しますわ……」
「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。ユカの母親、ウインドウですっ。息子と仲良くしてくれてありがとうございますっ」
挨拶をして顔を上げた三人がビックリしていた。
「え……母上?!」
「ウソ……お母様……!? そっくり……」
「ええええーっ。なんで小さなヴェッソーちゃんがここにいるのっ?」
三人が混乱したのは当然とも言える。
目の前にいるはずのない人間がいたからだ。
「何故? お母様の名前を知ってるの!? 貴女はどちら様なのですか??」
「待って、ヴェッソーちゃんがここにいるわけないわよねっ。あの子は伯爵様と結婚して……こんな小さいわけないわっ。一体どういうこと!?」
「二人共、落ち着いて下さい。僕は状況がわかりましたから」
「お兄様、どういうことですの?」
「ルーム、落ち着け。ここにいるのは母上ではない。そっくりだけど別人だ」
ホームは三人の中で唯一状況が理解できているようだった。
「ウインドウ様。貴女は、僕の母上……ヴェッソーを御存じなのですね」
「え、ええ。あの子は妹。私の妹ですわ」
「え。えええーっ。おばさまがお母様のお姉様ってことですか!?」
「ど、どうやらそういうことになるみたいだわねっ。なるほどね、小さなヴェッソーちゃんがここにいるわけが分かったわっ」
お互いが親類みたいなものだと理解できたウインドウとホームとルームの三人は、その後、ホームとルームの母親の話で盛り上がり、その後一緒に食事の準備をしたのだった。
そして現在に至る。
◆◇◆
「ルームちゃんは小さい頃のヴェッソーちゃんそっくりよ。美少女なところもねっ」
「おばさま。お母様は小さい頃、そんなに私にそっくりだったのですか?」
「ええ。性格も見た目も、今のルームちゃんそっくりだったわよっ」
「私、小さい頃のお母様の記憶しか無いんです。お母様は病で亡くなってしまいましたから……」
「そう……。ルームちゃん、おばさんのこと、お母さんだと思っても良いのよ」
「えええーっ、そんな。私まだユカ様とそんな関係じゃないのに……不束者ですが、よろしくお願い致しますわっ」
「え? ルームちゃん。何か勘違いしてないかしらっ。私は貴女のお母さんのお姉さんだからお母さんみたいに甘えても良いのよって言ったのよっ」
それを聞いたルームさんが顔を真っ赤にしてしまった。
「え、えええーっ! 私、思いっきり勘違いしてしまいましましたわ。はしたないすすす姿を見せてってて、もも申し訳ございませんっっ!」
顔を真っ赤にして焦っているルームさんを見てホームさんがクスクス笑っている。
「ホント、そっくりよ。ヴェッソーちゃんもそんな姿よく見せてくれてたわっ」
ルームさんはそれを聞いてますます顔をうつむかせて黙ってしまった。




