525 食料保存の方法
父さんの村長就任式が終わり、ボク達は急遽引越しをすることになった。
この家では村全体の統治ができないからだ。
荷物は大した量でもないはずだが、家の中には兵士から住民からがいっぱいに入ってきている。
これだけの人数がいれば一人一つずつの荷物を持っても一時間もかからずに引っ越しが終わってしまうだろう。
そしてボクや父さん、兄さんは普通の兵士の倍以上の荷物を平気で持つ事ができる。
シートやシーツも狼のその巨体で背中にいくつもの荷物を載せて平然と歩きだした。
なんということでしょう。
あれだけ家一杯にあった荷物が、あっと言う間に村長の屋敷に全部運ばれてしまったのです。
と、冗談はさておき。
引っ越し作業は本当に一時間もかからず終わってしまった。
今日からここがボク達の家になるのか。
どうやら元の村長さんは夫婦で息子さん達と住む予定だった別の家に移ったらしい。
元村長さんは良い人だから村の人達も色々と世話してくれるだろう。
ボクは新しい家で自分の部屋に入った。
ベッドは前の家のものをそのまま持ってきたが、部屋が広く感じる。
やはり村長の家ともなると、男爵というだけにそこそこの広さがあるようだ。
「さーて、家が広くなったからお掃除のやりがいがありそうねっ」
母さんは腕まくりをして部屋の掃除を始めた。
ここにいたら掃除の邪魔になりそうなので、ボクは部屋から出て家の中庭に向かった。
そこには父さんと数名の村の男の人達がいた。
父さんは備蓄倉庫の方に行き、村の備蓄をどうするか考えている。
「うーむ、できるだけ祭りに使うものと冬を越すためのものを分けておきたいんだよなぁ」
緑の野菜、得に葉物は長持ちしない。
すぐに食べないとダメになるのでこれは祭り用になるだろう。
根菜とかも長持ちはするがやはり保存方法が限られ、そのままでは数か月も持たない。
父さんはどうやってこれを保存用と食料にするのかの仕分けをしていた。
村全部の食料となるとこれがかなりの量である。
「困ったもんだな、これだと冬まで持たずに腐らせてしまうかもしれん。それだと勿体ないので一気に使ってしまうしかないか」
「父さん、ボクも手伝うよ」
ボクは思わず声を出してしまった。
だがこれを保存する方法は正直いってボクには思いつかない。
エリアさんのレザレクションを使ってもらえば野菜を新鮮な状態に戻すこともできるが、ボク達がここを離れたらそれもできない。
ボクが悩んでいた時、頭の中で声が聞こえた。
『ユカ、それなら冷蔵庫を作ってしまえばいいじゃないか』
『レーゾーコ? 何ですかそれ?』
ソウイチロウさんのアイデアはボクにも想像がつかない。
レーゾーコ、これがあれば食料を長持ちさせられるのだろうか。
『ユカ、冷蔵庫ってのはな、冷たい部屋の中に食料を入れておく場所のことだ。これがあれば長時間食料をしまっておくことができる』
『ソウイチロウさん、それってすぐに作れるんですか?』
『まあ、ユカのスキルなら可能だろう。氷で出来た部屋を作ってしまえばいいわけだから
』
なるほど、確かにそれだとボクのマップチェンジスキルなら可能だ。
そのレーゾーコってのが作れたら村のためにもなる。
「父さん、ボクに良い考えがあるんだ」
「ユカ、今は遊んでいる場合ではないぞ」
「遊びじゃないよ、ボクがこの食料を保存する方法思いついだんだ」
「何だって!?」
ボクはみんなを連れて、鍵のついていた屋敷の地下室に入った。
しばらく使われてなかった部屋は、何もない場所だった。
どうやら以前武器防具を貯蔵していた場所だったようだが、戦争の中で全部の武器防具を出したことでもぬけの殻になっていたらしい。
「この広さなら使えるな」
ボクはソウイチロウさんの言っていたレーゾーコをこの地下室に作ることにした。
「おや、ユカが何か面白そうなことをしようとしているねェ」




