524 村長の資質
第五章スタートです。
最強の竜王登場! 今までに名前だけは何度か出てきています。
第四章 あらすじ
記憶と力を失ったユカだったが、旅の中で自らマップチェンジスキルを使いレベルアップ。その後、仲間の協力で邪神竜ザッハークを倒した。
そしてリバテアに戻った彼はその力で魔将軍アビスによって起こるはずだった未曽有の大災害を一人の犠牲者も出さずにマップチェンジスキルと仲間の協力で退けた。
復興したリバテアからバスラ伯爵領に向かったユカ達は時渡りの神殿に到着、ここでユカは分裂した創一郎とお互いを理解し、二人で協力するようになった。
その後魔将軍アビスによってバスラ伯爵が変貌したグリードスライムを倒し、南方の魔族の大軍と戦うために、それぞれが軍勢を募り分散。
仲間達と一緒に多くの戦う仲間を集めて集結したユカ達は、数万を超える魔族の大軍との決戦を制し、魔将軍アビスと魔将軍ゲートを撤退に追い込み、魔将軍パンデモニウムを撃破した。
父さんの任命式は盛大に催された。
今回のコミエンゾ村の収穫祭は南方から逃げてきた人を助けるために食料や物資を回すことで、延期になっていた。
しかしもう魔族やモンスターの大軍に怯えることは無い。
そう思った村の人達が我慢して備蓄していた食料や物資をここぞとばかりに差し出してきた。
「皆さん、あくまでも自身の意志で差し出せるだけにしてください。この祭りで全部出してしまいその後冬を越せないと本末転倒になってしまいますから……」
ゴーティ伯爵はあくまでも祭りに使う食料や物資を出せる範囲で留めておけと言っている。
だが盛り上がった住人はそれでもここぞとばかりに食料や物資を次々と大広間に集めていた。
「仕方ありませんね。ウォール男爵の最初の村長としての仕事は、この食料をいかに無駄にせずに保存と使うところの区分けできるか……といったところでしょうか」
「ゴーティ伯爵様、それでしたら戦地でやっていた作業と大して変わりませんから、お任せください」
父さんは食料や物資に事欠くような最前線で長年戦い続けてきた。
そんな父さんなら食料を無駄遣いせずに保存や使用する方法、備蓄のノウハウにはかなり長けているはずだ。
「流石です。長年最前線を守ってもらった実績といったところですかね」
「ハハハ、まあそれほどのものではないですけどね」
流石というべきはゴーティ伯爵の方だと思う。
伊達や酔狂で父さんを男爵や村長にしたのではなく、実際の戦場での指揮統率の経験が村長を任せるに値するだけの人物だと見抜いたのだろう。
「いや、実際これだけ就任してからすぐに食料の備蓄と使用分をすぐに選り分けるのは長年の経験が無ければ出来ないはずだ」
「まあ、前線は何もない中で耐える戦いでしたからね」
父さんとゴーティ伯爵が話をしていると、前の村長さんが家から出て広場にやって来た。
「これはこれは、ノーチ村長。お久しぶりです」
「ウォールさん。いや、ウォール男爵殿、立派になられましたなぁ」
「いえ、私が不甲斐ないばかりにご子息様を……」
「何を言うか、アイツはいつも言っておった。英雄ウォールさんと一緒に戦えて光栄だと。あの戦いで悪かったのはウォール殿ではなくあの忌々しいヘクタールだ!」
そういえばヘクタール男爵は父さんの上官だったんだな。
「息子が死んだのは戦争だ。それも仕方のないこと。だが心残りはこの村を任せる後継者がいなかったこと。だが、その悩みももう無くなったからな」
「つまり、それは……」
「ウォール男爵殿、今後、このコミエンゾ村のことは任せましたぞ。息子も貴方ならお任せできますと言っておっただろう」
前の村長様は父さんのことを恨んではいないようだ。
むしろあのヘクタール男爵のことを相当憎んでいるらしい。
まあ、ヘクタール男爵はボク(ソウイチロウさん)が倒したので、もうこの世にはいない。
「満場一致で皆さんがウォール男爵の村長就任を祝っていますよ」
祭りの準備をしている人達は全員が父さんに話しかけている。
それは村の英雄が帰ってきたというだけではなく、今後の村のことを頼みますと全員が言っているように見えた。
「アンタのお父さん、相当の人気者なんだねェ」
「そうみたいです。まあ、父さんは昔から強かったですし、みんなの困ったことを解決してあげていたみたいですから」
「なるほどねェ」
祭りの主役は間違いなく父さんだった。
そして、父さんが仕切ることで食べ物は無駄なく、それでいて豪勢に用意することができた。
ボクのスキルなら足りなければ別の村や町から調達することができたのだが、父さんがそれをするなと言っていた。
どうやらいつでもある物と考えてしまうと、いざという時に無くて苦労する。
それは父さんが戦場で身に付けた経験だったらしい。
戦場帰りでリスクマネジメントもできるリーダー気質。
確かに父さんは新村長に相応しい人物なのだろう。




