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519 心の中の会話

誤字報告ありがとうございます。

リアルに忙しいので夏休み明けになったら反映できるようにしたいです。

 ボクのスキルで作った大橋は数百人が上に乗って移動してもビクともしない頑丈さだ。


『凄いな、ユカ。この橋、まるでベイブリッジ並だ』

『ベイブリッジ? 何ですかそれ?』

『私がかつて住んでいた国に有った巨大な橋のことだ。多分……馬車が数百台載ってもビクともしない橋だったよ』

『そんな橋があったんですか! それって神様が作ったんですか?』

『いや、普通に人間が作った橋だぞ。まあ完成までに10年以上かかったけどな』


 むしろ10年でそんな巨大な橋が作れるってことの方がよほど凄いと思うけど……。


『しかしユカの能力はそれ以上だからな、マップチェンジでこの巨大な橋を一瞬で作ってしまえるのだから』

『ソウイチロウさん、ボクの力って……そんなに凄いものなのですか?』

『お前は自覚が無いだろうけど、この力は数万の魔族の大軍を一瞬で倒したんだぞ』


 今でも信じられないが、確かにボクが眠ってしまった間にソウイチロウさんがこの身体を使って数万の魔族とモンスターの大軍を倒したのは事実だ。

 このスキルは使い方次第で本当に、神にも悪魔にもなれるというのも言い過ぎではない。


 ボクにはそれだけの力を使いこなせる自信ははっきり言って無い。

 だけど、ソウイチロウさんがもしこの力を使いこなせば何でもできるのかもしれない。


 幸いソウイチロウさんはそういう力を悪用する人ではないから安心だ。

 しかしもし、ソウイチロウさん並の知恵と機転がありながら、その力を悪用する人がいるとすれば……それは世界を崩壊させかねない相手だ。


『ソウイチロウさん、貴方はあのバグスとかヒロとかをどう思いますか?』

『どう思うと言われると……バグスはどうも私の知っている人に何か関係がありそうな気がするんだ……ヒロについては、よくわからないな。会ったような覚えはあるかもしれないが、何度も会ったとすればあれだけのインパクトがあれば覚えているはずだし』

『そうですか、では……あまりよく分からないんですね』

『そうだな、すまない。力になれなくて』


 ソウイチロウさんもバグスやヒロが何者かはよくわからないようだ。


「ユカ、そんなに考え込んで何をしていたのかねェ?」

「エ、エントラ様?」


 大魔女エントラ様がボクの顔を覗き込んできた。

 彼女のいきなりの行動に、ボクはビックリして尻もちをついてしまった。


「アハハハ、そこまでビックリすることも無いだろうにねェ。オバケでも見たんじゃないんだからさ」


 いきなり現れたらオバケと勘違いしますよ!


 ボクは言いかけた言葉をグッと飲み込んだ。


「何か、悩み事かねェ?」

「い、いえ。大したことじゃないんで……」

「あのバグス……とかいうのと、ヒロの正体……ねェ」


 何で何も言っていないのに、この人はそれを言い当てたのだろうか!?


「あら、何で考えていることがわかったんですか? と言いたい顔だねェ。(わらわ)は簡単な読心術くらいならそのまま使えるからねェ」


 この人の前では隠し事は出来なそうだ。


「それと……ユカの中のもう一人のことも……まあ、みんなには黙っておいてあげるけどねェ」


『な、何で私の事まで!?』

『アンタ……ソウイチロウ、さんだったねェ。ユカの前世ってヤツだっけ?』

『エントラ様! 何でボクの心の中で会話が!?』


 傍から見るとボクと大魔女エントラ様は特に会話をしているようには見えない。

 だが尻もちついたボクと笑っている演技の大魔女エントラ様は心の中で会話をしている。


『まあ(わらわ)は魔法の達人だからねェ。この世に有る大半の術式はマスターしているからねェ』

『エントラ様、それなら話は早いです。あのバグスという男は一体何者なんですか!』


 ソウイチロウさんが珍しく冷静さを失ったような話し方をしている。


『そうねェ。全部見抜けたわけではないけど……アレはアンタの世界からの転生者で間違いないねェ。それも……膨大な憎しみを抱えているねェ』


 ソウイチロウさんの聞いた話は、かなり踏み込んだことになりそうだ。

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