517 飲めや歌えの大宴会
ボク達は激戦の勝利を祝い、宴会の最中にいた。
「やったぜー!」
「かーっ! 酒が旨い!」
「食え喰えー! 吐くまで飲むぞー!」
戦士達、武士達、それに傭兵まで含めると七千人以上!
それだけの人達が、キャンプ地に大量にいて飲めや騒げやの大宴会だ。
「しかしわざわざここで宴会しなくても、ユカ様のスキルで城でも街でも全員移動できるのじゃないのかしら?」
「ルーム、それじゃあ全員入れる場所ってどこにあると思う? 流石に七千人以上はフランベルジュ領も父上の城も無理だよ……」
そりゃそうだろう。
これだけの人数がいれるだけの場所は、どこを探してもそう簡単には見つからない。
幸い天気が晴れているので、これだけの人数が星空の下で飲み食いしても十分広さがあるからみんな安心して楽しんでいる。
「ふむ、皆楽しんでおるのう。ワシが雨が降らんように天気をこんとろーるしておるからのう」
「あら、でも妾の魔法なら雨をプロテクトフィールドで一切降らないようにできるけどねェ」
「おぬし……ワシに喧嘩を売っておるのか?」
「あら、そんな風に聞こえたかしらねェ?」
大魔女エントラ様とアンさんが激しく睨み合っている。
「ぷっ! ははははは」
「くッ。ハハハハハ……」
大魔女エントラ様とアンさんの二人が顔を合わせて大笑いした。
「へ?」
二人が肩を組んで笑っている。
「相変わらずじゃのう。じゃが、それを豪語するだけの魔力を持っておるのはおぬしくらいのものじゃからのう」
「アンタこそ、天気を自在に操るなんて、そりゃあ神様呼ばわりされるってわけよねェ」
「おぬしも流星の魔女とか大魔女と言われておるではないか」
「まあねェ。長年生きてると経験は無駄に増えるからねェ」
どう考えても普通の人間の会話ではない。
二人共、人間を大きくかけ離れた魔力の持ち主だ。
この二人がスキルを使っているのなら、この天気が変わらないのも納得だ。
宴会はいつまでも続いた。
食事は足りなくなったらボクの作ったワープ床でリバテアや冒険者ギルドの町、カンポ村といった場所からいくらでも調達可能。
改めてボクのスキルがチートクラスのものなのだと感じた。
この能力があれば食料不足になることはまずありえないからだ。
足りなくなったら調達、そして肉、野菜、魚、香辛料、そして大魔女エントラ様の大好きな砂糖などの甘味料が次々と運び込まれ、食事が作られ、そしてすぐに消費される。
巨大な牛の丸焼きがものの数分で姿を消す。
貴族焼きの穀物を詰め込んだ豚も完成後数分で無くなった。
大型の鯨をカイリさん達が捕まえて海から持って来てくれたが、これもやはり一時間も経たずに全部料理されたくらいだ。
際限なく作られ、そしてその後すぐに姿を消す料理。
流石七千人以上の大軍勢だ。
だがもしあの戦いに負けていたら、魔族の食料にされていたのはここにいる全員だった。
そう考えると、この食事は彼ら全員の働きに対する十分な対価だといえるだろう。
三日三晩飲めや歌えの宴会が続き、流石に全員が疲れてグロッキーになっていた。
「皆さん、無理しないで下さいね……レザレクション」
エリアさんの力は流石、創世神の力の片割れだといえるだろう。
彼女の力は、あれだけ騒いで疲れ果てていた人達を一瞬で完全回復させた。
七千人以上の状態異常を一瞬で回復できる、これほどの力はアンさんや大魔女エントラ様でもさすがに無理だろう。
「へェ、大したものだねェ」
「うむ、これはまさに創世神の力と言えるじゃろうて。ワシもこれ程のことは出来ぬわ」
エリアさんのおかげで状態と体力の回復した人達は、荷物をまとめてそれぞれが帰還の準備を始めた。
さあ、ボク達も家に帰ろう!
ボクは父さんや兄さん、それに国境警備隊の人達と一緒にレジデンス領に帰ることにした。




