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516 帰ろう…家へ

 魔将軍達のいた牙城は跡形も無く姿を消した。

 その場に広がるのは荒涼とした大地だけだ。


 ここで人類の歴史に残るような凄まじい激戦が繰り広げられたとは、ここを見ただけの人には決して信じられないだろう。


 ボク達は大地の震動が収まってからアンさんに地面に降ろしてもらった。


「ほれ、もう大丈夫じゃろうて」


 ボク達を地面に降ろしたアンさんはドラゴンから少女の姿に変化した。


「ありがとうございます」

「いいってことじゃ。それより、えんとら、おぬし一体何をしようとしておるのじゃ?」


 大魔女エントラ様は杖を叩く掲げて何かの魔法を詠唱している。

 もう敵はいないはずだ、だけど一体何をしようというのだろうか?


「我、エントラ・アポカリプス也。我、アポカリプスの一族としてかの地を封印する。この地に災い無く、永久の平穏のあらんことを……」

「エントラ様!」


 大魔女エントラ様の魔法は、牙城のあった一帯全てを何重にも覆った光の膜で包み込んだ。


「さあ、これで今後誰一人として、この場所に足を踏み入れることも外に出ることもできないからねェ」


 大魔女エントラ様は自らの持つ全ての力を使い、牙城の一帯数キロに渡り巨大な光と虹の膜を作った。

 これはここから二度と魔族が現れないことを意味するのだろうか。


 もしそうならば、父さん達の仕事も終わる。

 ここは魔族から帝国を守るための最前線だった。

 しかしその役目が終われば、父さんや兄さんがこの場所に残る必要は無くなるのだ。


「さて、それじゃあみんなのいるところに行こうかねェ」

「はいっ!」


 ボク達は結界で封印された牙城の跡地を後にし、先に脱出した騎士団や武士団達に合流した。


「ユカ! 勝ったんだな!」

「うん、父さん。ボク達、ついに魔族に勝ったんだ!」

「ユカ、すごいじゃないか。もうオレなんてユカに追い抜かれてしまったな」


 兄さんがボクの頭をくしゃくしゃにしながら撫でてくれた。


 だが、そんな空気を一変させたのはゴーティ伯爵だった。


「皆の者、此度の戦い、誠にもってご苦労だった! ついに私達は魔族からの侵略を退けたのだ。皆の者、よくやってくれた。心より礼を言うぞ」

「ゴーティ伯爵様、有り難き幸せ。私には勿体ない言葉でございます」


 父さんが慣れない言葉を使っている。


「そこで、ウォール兵士長。其方に授けたいものがある」

「わ、私にですか?」

「そうだ。今までの帝国に対する貢献、そしてヘクタールに理不尽に奪われた本来の功績に見合うだけの褒美を授けたい」

「そ、それは一体何でございますでしょうか」


 その直後、ゴーティ伯爵は真剣な表情になり、高く剣を掲げた。


「ウォール・カーサ兵士長、ゴーティ・フォッシーナ・レジデンス伯爵の名において、其方を男爵と任命し、兵士長の任を解き、新たにコミエンゾ村村長の任を命ずる」

「!」


 なんと、ゴーティ伯爵により、父さんが村長に任命された。


「そ、そんな……私には荷が重いです。それに今の村長様が……」

「今の村長には後継者がいない。また、村長は早く引退したいと言っていた。そんな中であの村の村長に相応しい人物、それは其方を置いて他にいるまい」

「は、はい。不肖ウォール・カーサ。コミエンゾ村村長の任、拝命致しました」

「これまでずっと前線で戦い続けていたのだ。これからは村でゆっくりと身体を癒すがよい」


 父さんは深々と頭を下げ、ゴーティ伯爵様に礼をした。


「父さん、おめでとう!」

「父さん、やりましたね!」

「お前達、ありがとうな……ありがとうな」


 父さんが顔を涙で濡らしている。


 そしていつの間にやら、割れんばかりの拍手が辺りから巻き起こっていた。


「父さん、コレで家に帰れるね」

「そうだな、母さんに久々に会いたいもんだ」


 父さんはしばらく帰れなかった家のことを思い出しているようだった。


「そうだね。父さん……帰ろう、家へ」

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