515 ありがとうございます
戦いは終わった。
魔族の大軍団四万以上、魔将軍ゲート、魔将軍アビス、魔将軍パンデモニウムといった魔族最強の魔将軍までそろった絶望的な戦力差。
それに対し、人間側はボク、エリアさん、ホームさん、ルームさん、大魔女エントラ様にカイリさん、マイルさん、フロアさんに、サラサさん、双子の狼のシートとシーツ、ドラゴンのアンさんといった仲間達。
それとボクの父さんのウォールと兄さんのピラー、ホームさん達兄妹のお父さんのゴーティ伯爵に帝国騎士団のラガハース騎士団長とミクニの国王兄妹のミクニ・リョウカイ様、ミクニ・リョウクウ様。
それ以外にはハンイバルさん達の冒険野郎Aチームや帝国騎士団とフランベルジュ領の有志達にゴーティ伯爵の兵士達、ミクニの武士団と父さんの部下の国境警備隊。
全員合わせても総勢七千少しといった到底勝てるとは思えない数だった。
だが、実際大激戦が終結し、魔族は一匹残らず姿を消し、魔将軍ゲートと魔将軍アビスは離脱。
魔将軍パンデモニウムを中心とした魔族の大軍勢は全滅、人間側は重軽症者多数ながらも、死者は誰一人いないといった奇跡のような勝利だった。
「ついに……終わったんだ」
「ユカ様! 私達の大勝利ですわ!」
「ルーム、ユカ様は疲れてるんだから抱き着くなよ」
「良いじゃない、喜びを体で表現できるってのは生きてる証拠だからねェ」
「おぬしら、どうでも良いがワシの背中で暴れたら落ちるぞ」
ボク達はドラゴンの姿になったアンさんの背中に乗せてもらい、崩れ落ちるパンデモニウムの牙城から脱出できた。
牙城が地の底深く沈んでいく。
ボク達がパンデモニウムと死闘を繰り広げたコロシアムのあった場所も、もう崩れ落ちる瓦礫に押しつぶされ、何も残っていない。
最後に意識を取り戻したパンデモニウムと召使いの少女カダン、あの二人は最後に何を感じたのだろうか……。
ボクは崩れ落ちる牙城を眺めながら、地の底深くに消えていった二人のことを考えていた。
「ユカ……大丈夫?」
「あ、エリアさん。だ、大丈夫ですよ」
ボクの表情を見てエリアさんが心配してくれたようだ。
そんなに深刻な表情に見えたのだろうか。
魔将軍パンデモニウム。
とてつもない強敵だった。
四本の武器を持ち、巨大な体躯で襲いかかる戦士。
魔族ではあったが、その性格はとても立派な相手で、正々堂々とした戦いを挑んできた。
ボク一人だけでは決して倒すことは出来なかっただろう。
ホームさん、ルームさん、大魔女エントラ様、アンさん、彼ら彼女らの手助けが無ければ負けていた。
それとソウイチロウさんだ。
彼のヒントが無ければあの際限無い自己修復に打ち勝つことは出来なかっただろう。
そう考えると一番の功労者はソウイチロウさんだといえる。
『ソウイチロウさん、ありがとうございました』
『ユカ。私はお前の身体を使って好き勝手に動いていたんだぞ、それに対する思いは無いのか?』
『いいえ、貴方は確かにボクの身体を使って冒険していました。ですが貴方は誰も苦しめず、むしろ魔族や悪人に苦しめられた人達を助けてくれたんです。それに対して何の文句を言えばいいんですか?』
実際ボクが救世主と言われるだけのことを成し遂げてきたのは、実際この身体を使ったソウイチロウさんだった。
ボクとソウイチロウさんは時渡りの神殿で初めてお互いの存在を感じることができた。
それからは二人で一緒に戦ってきたのだ。
多分これからもボクはソウイチロウさんと一緒に戦ったり冒険していくのだろう。
ボクは改めてソウイチロウさんにこう伝えた。
『ありがとうございます。これからもボクと一緒にいてください』
『ユカ……本当にそれでいいんだな。わかった、人生の先輩としてこれからもできるアドバイスをしてやるよ』
ボクは決意も新たに、皆に救世主と呼ばれる道を進むことを選んだ。




