509 呪いの武具を破壊しろ!
同時に四つの武器を破壊する。
これがあの邪凱装パンデモニウムを倒せる唯一の方法だ。
どうやら見ていると呪いの武具は一つ一つが傷ついても残った別の武具がそのダメージを自己再生している。
これがあの邪凱装パンデモニウムの驚異の再生能力の正体だった。
『ユカ、見事だ、アレを見て同時に四つを倒すことで倒せる敵と見抜いたんだな』
『ソウイチロウさん、貴方のヒントのおかげです』
『まあ私が昔作ったゲームにも自己再生を繰り返す究極防衛システムって敵がいたがな、ユカにはそれとは別の敵の倒し方を伝えたが、偶然その答えに辿り着いたみたいだな』
相変わらずソウイチロウさんの話は専門的で、何を伝えたいのかがわかりにくい。
だけど、ボクがあの怪物を倒す方法に辿り着いたのは正解だと言ってくれている。
『ユカ、みんな協力してくれるみたいだから絶対に出来る。お前達はこれまでも数多くの強敵を倒してきたんだ』
『ソウイチロウさん、ボク、やります! やってみせます!』
ボクはそう決意し、遺跡の剣を強く握った。
「ユカ? 何をブツブツ言ってるんさねェ? やるならさっさとやらないとまたせっかくのダメージが回復してしまうからねェ」
「わかりましたっ!」
ボク達四人は邪凱装パンデモニウムを囲むように四方向に散らばり、コロシアム跡地の中心で最後の戦いに挑んだ。
「ギャラグジャァアァァン!」
邪凱装パンデモニウムが謎の奇声を発しながら四つの剣を振りまわし始めた。
「この腕は僕が引き受けますっ!」
「私も手伝いますわっ!」
ホームさんとルームさんの二人が一本の腕を狙い、その手に持った剛剣に飛び掛かった。
邪凱装パンデモニウムは虫を払うがのごとく二人を追い払おうとしたが、ホームさんはその剛剣をあえて受け止め、そのカウンター攻撃に合わせてルームさんが魔法を叩き込んだ。
「さあ、極大の雷……しかと味わいなさい。トール・ハンマァー!」
「ガガガギャガァァ!」
カウンターの打撃で剛剣にヒビが入った場所に極大の雷が直撃した。
その衝撃は剛剣に細いヒビとして全体に走り、そのすぐ後に剛剣は粉々に砕け散った。
「後三本!」
今度は反対側からアンさんが格闘技で蛮刀の刀身を目掛けて乱打を浴びせている。
「ほれほれほれほれほれっ! 足元がお留守じゃぞっ」
アンさんは邪凱装パンデモニウムの回転攻撃をかわしながら確実に手の握った部分を目掛けて猛追劇を繰り広げている。
「非力な童の姿だとて使い道はあるんじゃ、むしろ龍の姿ではこれほど機敏には動けんからのう」
アンさんの動きは神業とも言えるレベルで、目で追いかけるのも必死。
そんなとてつもない速さで何十回、何百回と打撃を入れられた邪凱装パンデモニウムの上右腕は再生も追いつかずにボロボロになっていた。
「とどめじゃっ!」
アンさんが大きくジャンプし、コロシアム跡地から少し離れた見張り塔目掛けて跳び上がった。
そして見張り塔の壁を蹴っ飛ばし、その反動で鋭くキックを決める。
「秘技、龍神滑空脚!」
「ギャゴォオオオ!」
斜め上空から鋭く貫いたアンさんのキックは邪凱装パンデモニウムの蛮刀と持ち手の右腕を粉々に粉砕した。
「手応え、有りじゃのう」
これで邪凱装パンデモニウムの残った武具は下左腕と下右腕の二本だ。
「さて、次は妾の番かねェ」
大魔女エントラ様が杖をくるりと回した。
「正攻法で戦うだけが戦いじゃないからねェ」
大魔女エントラ様はニヤリと笑うと、何か魔法を詠唱し始めた。
無詠唱で大魔法を使うことができる大魔女エントラ様がわざわざ詠唱をするくらいだ。
一体どれだけの大魔法を使おうというのか。
「さあ、魔法の神髄を見せてあげようかねェ!」
大魔女エントラ様の魔法。
単純に強力な攻撃魔法を使うだけではないのは分かるが、一体何をしようというのだろうか。
『ユカ、どうやらこの後面白いものが見れそうだな』
ソウイチロウさんは大魔女エントラ様が何をしようとしているのかが、分かっているようだ。




