502 折れない魂の剣
「この鍛え上げた肉体こそ最強のオレの武器よ」
魔戦士パンデモニウムは頭だけそのままに身体を高速回転させて凄まじいエネルギーの塊になっている。
『オイオイ、昔のロボアニメの必殺技かよ……』
『ソウイチロウさん、それって何ですか?』
『いや、気にしないでくれ。昔似たようなものを見た覚えがあったのでな、つい……』
この件に何かを言うのは野暮な気がしたのでボクはあえて黙っていることにした。
『しかし、もしあの必殺技が私の見ていたロボアニメと同じような技ならかなり危険な技には違いない』
『ソウイチロウさん、それってどれくらいの強さだったんですか?』
『そうだな、私の覚えている限りで言えば、巨大なゴーレムみたいなものを一気に20体近くは一瞬で倒せるような技だった』
『それってかなり危険なんじゃないですか!』
『そうだな、ホームがあの技をどう切り抜けることができるか、もしできなければ……』
『どうなるというんですか?』
『間違いなくエネルギーと衝撃で粉々に砕け散って死ぬ』
なんという技だ。
見た目の滑稽さと違い、あのパンデモニウムの技はとてつもない破壊力だとソウイチロウさんは言っている。
「行くぞ、オレの渾身の一撃……! ハイパースピンインパクト‼」
全身を巨大な一つの回転とし、無軌道に突っ込んでくる技が繰り出された。
しかしあまりの力の暴走にどうやら魔戦士パンデモニウム本人ですらコントロールできないらしい。
無秩序な高速回転は辺りにいた魔族すら巻き込み粉微塵になっている。
さらに回転のエネルギーは周囲の壁面も大きく削り、牙城全体にすら大きなダメージになっている。
もしこんな状況で何か大きな力でも加えたら牙城自体が崩壊するほどボロボロになっていると言える。
「パ……パンデモニウム様ぁー!」
「ギャアアー!」
パンデモニウムの超必殺技は彼の部下すら巻き込んでしまうくらいコントロールでてきていない暴走状態だ。
もう既に本人ですら超高速回転を止める事ができない。
「く……あんなものを喰らったら全身がバラバラになってしまう」
「お兄様、私が……」
「ダメだ、下がっていろ」
ホームさんは一人だけであの魔戦士パンデモニウムの必殺技を耐えしのごうとしている。
「大丈夫だ、ルームのおかげで僕はアイツの対処法を見つけることができた」
そう言うとホームさんは聖剣魂の救済者を両手で握った。
「あの一撃を喰らえばこの聖剣魂の救済者でも折れてしまうかもしれない。でも、僕の魂を剣にすれば……決して折れはしない!」
ホームさんは魂の救済者を高く掲げ、大きく叫んだ。
「僕の魂よ、何物にも折れない強き剣として……どこまでも伸びろ!」
ホームさんの作り上げた魂の剣は光り輝く虹色になり、どこまでも大きく空を貫いた。
「行くぞ、ハイパー……オーラソード!」
魂の具現化した巨大な光の剣が高速で突っ込んでくる魔戦士パンデモニウムの身体を捉えた。
「ググゥウウオオオオッゥ‼」
「でやぁああああーッッ!!」
魂と魂、エネルギーとエネルギーが激しくぶつかる!
そして、その鍔迫り合いに競り勝ったのは……!
「でやぁあああーーー!」
ホームさんの折れない魂の剣だった。
高速で回転していた魔戦士パンデモニウムは全ての武器防具を砕かれ、全身も凄まじい音と共に骨がグシャグシャに砕ける音を響かせ、地面に転がったまま壁面に凄まじい勢いで激突した。
魔族と人間の戦いを制したのは、ホームさんだった。
◆
ズガァアアン!
ドオォオオンッ!
魔戦士パンデモニウムとホーム・レジデンス、ルーム・レジデンスとの対決の衝撃は少し離れたパンデモニウムの部屋にまで響いていた。
「何なの? この衝撃は……ご主人様、どうかご無事で……いや、ご主人様、私、もう待っていられません!」
召使いの少女は彼女の主人であるパンデモニウムのことが気がかりになり、彼の言いつけを破ってコロシアムに向かって走った。




