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500 一進一退の死闘

 激戦は続く。

 魔戦士パンデモニウムとホームさん、ルームさん二人の死闘は三十分以上経ち、もうすぐ一時間になろうとしている。


 その戦いの中で魔戦士パンデモニウムは四本の剣を高く掲げた。


「人間の騎士よ、これがオレの力だ、ウォオオオオオーッ!」


 大地をすさまじい雄たけびが響かせた。

 壊れかけた柱がその雄たけびの衝撃で崩れ去ったくらいだ。


 雄たけびを止めた魔戦士パンデモニウムは、四本の剣をそれぞれの手でグルグルと回転し始めた。


「これがオレの超必殺技、クワドラブルサイクロンだ!」


 魔戦士パンデモニウムの四本の剛剣と蛮刀が辺りを巻き込みながら彼の腕の位置に四つの巨大な竜巻を作り上げていた。

 この竜巻は魔法で生み出したものではない。

 魔戦士パンデモニウムが超高速で武器を振り回しているのが巨大な竜巻を作り出しているという状態だ。


 通常、武器を高速で振りまわしたというだけでこれ程の竜巻のような大旋風は作れるわけがない。

 しかし魔戦士パンデモニウムはそれを可能にするだけの身体能力を持っているのだ。


「風の攻撃なら…エネルギーを奪い取れるはずですわっ!」


 ルームさんが地面に立てた杖に魔戦士パンデモニウムの竜巻を奪い取ろうとした。


「無駄だ!」

「キャアアッ!」


 しかしこの風圧は魔法のエネルギーで作られたものではない。

 剣を振りまわすすさまじいスピードが生み出した強烈な物理的な突風だ。

 魔力を得意とするルームさんでも、この剣圧はエネルギーとして奪うことはできなかった。


「ルーム!」

「お兄様……」

「今はそこで少し休んでろ。僕があいつを倒す!」

「フフフフ、勇ましいものだ。気に入った」


 魔戦士パンデモニウムは戦闘中にもかかわらず、ホームさんを褒めている。

 強者が強者を認めたということなのだろうか。


「う……くっ!」

「ルーム、怪我は無いのか?」

「ええ、大丈夫ですわ。少しバランスを崩してしまっただけですから……」


 ルームさんは風圧に吹き飛ばされた。

 しかし、何故かそのダメージは致命傷になるはずのものが、かすり傷程度で済んでいる。

 だからとルームさんが自身に防御力特化のバフを使う時間はほとんど無かった。


 だがホームさんは何かに気が付いた様子だ。


「ルーム、ありがとう。おかげでアイツに勝てる方法が見えた」

「何だと、オレに勝つ方法だと?」

「魔戦士パンデモニウム、僕がお前の攻撃を受け止めてやる!」

「そうはできるかな! いくらお前が強かろうと、このクワドラブルサイクロンの敵ではない!」

「僕は……お前を倒す!」


 魔戦士パンデモニウムが激しく剣を回転させて作り上げた竜巻でホームさんに襲いかかった。


「見切った!」


 ガイィイイン!


 ホームさんは突進してきた魔戦士パンデモニウムの上側の左腕を切り落とした!


「な、何故だ⁉ 何故オレの攻撃が⁉」


 ホームさんは鋭く斬りつけた剣を抜くと、その流れで左側の下の左腕も切り裂いた。


 勢いよく回転したままの剛剣が空中に舞い上げられる。


「回転の中心は無風。これに気が付いたからだ! ヒントをくれたのは妹のおかげだった」

「お兄様、(わたくし)、何もそんなに」

「いいや、ルームのおかげで分かったんだよ。パンデモニウムの手首から竜巻は作られていた。だから回転させている手首を切り裂いたんだ」


 二つの左腕の手首を斬られた魔戦士パンデモニウムはその切り裂かれた手首の血を舐めていた。


「フ、フフフフ。見事だ! オレの左手を二つとも使い物にできなくするとはな」


 魔戦士パンデモニウムの左腕は二つともかろうじてつながっているが、もはや武器を握れる状態では無い。


「左腕は使えなくなったが、だからとオレの勝ちが無くなったわけではない! いくぞっ!」


 魔戦士パンデモニウムは残った右腕で武器を回転させ始めた。


「そうはさせない!」

「かかったなぁ! アホが!」


 魔将軍パンデモニウムは武器の回転をやめ、武器を逆手に握るとホームさんを激しく突き飛ばした。


「グハァッ!」


 激しい突きはホームさんの身体を確実に捉え、その一撃は彼の身体に風穴を空けた!

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