496 異界門よ、閉じよ!
ボク達人間側の連合軍は飛龍武士団を先頭に、魔将軍パンデモニウムの牙城に突入した。
魔将軍パンデモニウムの牙城には、まだ眠りから覚めたばかりのモンスターが大量にいた。
どうやら魔将軍アビスの魔法は敵味方関係なく全ての者を眠らせてしまったらしい。
起き上がったばかりのモンスターは動きが緩慢で、本来の力を全く出せていなかった。
それに対し、ボク達人間側は、エリアさんのスキルのおかげで目が覚めた直後にも関わらず、状態異常から完全回復することができた。
この差はとても大きい。
魔将軍パンデモニウムの牙城の入り口『牙城門』と呼ばれる難攻不落の自然の岩で出来た巨大な門は、飛龍武士団の猛攻で容易く打ち破れた。
こうなると形勢は完全に逆転だ。
モンスターや魔族の軍勢は、大軍と呼べるほどの数は既に無く、城に残っていた防衛用の軍勢しか残っていない。
「ユカ、気をつけないとダメだからねェ。まあ、妾に任せるといいからねェ」
異空間に飛ばされたはずの大魔女エントラ様がボク達の軍勢に戻ってくれた。
彼女がいれば千体、いや、一万体のモンスターも敵ではない。
「ゲートが異界門を開いた形跡があるねェ。強い魔力を感じる」
大魔女エントラ様は魔族の軍を蹴散らしながら大量のモンスターのいる方向に突き進んだ。
「見えた、あれがゲートの開いた異界門だねェ!」
大魔女エントラ様はその場に立ち止まり、魔法の詠唱を始めた。
無詠唱でもあれだけの膨大な魔力を発動できる大魔女エントラ様が詠唱をする。
つまり、これは常人には計り知れないほどの凄まじい魔法が発動されるということだ!
「みんな、今すぐここから離れるんだ!」
ボクは地面にワープ床を作り、近くにいた人達を全て牙城門の入り口に移動させた。
その直後、凄まじい魔力が迸り、少し離れた牙城門からも大魔女エントラ様のいるコロシアムの広場の辺りが大爆発を起こしていた。
◇
「さて、ゲートの開いた異界門は魔界に通じているみたいだねェ。ここから大量のモンスターを呼び寄せてたってわけさねェ……それなら、ここを封じればもう二度とモンスターはここから入ってこれないねェ!」
大魔女エントラは迸る魔力を杖に集め、魔将軍ゲートの開いた異界門に解き放った。
「さあ、壊れろ! 異界との接点よ……我、アポカリプス一族の長、『エントラ・アポカリプス』の名において、異界門を閉じる。ディメンション・クローズ!」
異界門から這い出てこようとしたモンスター達の身体が輪切りにされる。
異界との接点を断ち切られたため、こちら側の世界に出ていた一部だけがぶった切られたような形になってしまったのだ。
おびただしい血が辺りに吹き出す。
数百のモンスターが一瞬で輪切りにされた地獄絵図がその場に展開されていた。
「あら、運が悪かったようだねェ。この状態じゃ魔界側の入り口も凄いことになってそうだねェ」
大魔女エントラは引きつった笑いを見せていた。
「さて、これで異界門からの増援はもう出てこないからねェ。こちらもお掃除と行こうかねェ!」
大魔女エントラは魔力を集め、自らの身体から一気に解き放った。
「これがアタシの昔からの得意技、マジックバーストだねェ!」
大魔女エントラは周囲からのエネルギーを集める能力に特化している。
それは彼女がまだ未熟だった頃、魔法の錬成ができない代わりに編み出した自らの身体をバイパスとして魔力を解き放つ方法だった。
この魔法発動方法を自身のものとした大魔女エントラは、アポカリプス一族随一と呼ばれた兄、魔将軍ゲートに魔法対決で打ち勝ったのだ。
「さーて、こっちは片付いたからねェ。後は任せてここで寝てるかねェ」
大魔女エントラは誰もいなくなった場所で戦いの疲れを癒すため、一人眠りについた。




