487 マップチェンジの最大活用
魔将軍アビスは次々とモンスターや魔族の大軍を出してきた。
アンデッド、火属性、そして次は地形に縛られない飛行タイプのモンスター達だ。
先ほどの戦いでは飛行タイプのモンスター達はミクニ・リョウクウの率いる飛龍武士団やドラゴンライダーのメートルック、そして魔法使いのルームに龍神イオリ様といった空戦のエキスパートが戦った。
しかし今は全員が魔将軍アビスの魔法で寝てしまい、誰も戦力にならない。
その上私は飛行スキルや魔法を持っているわけではない。
「いくらアンタが規格外のスキルを持っていると言っても、空を飛べなきゃ話にならないのよ。さあ、今度こそ空飛ぶモンスター達になぶり殺しにされなさい! キャハハハハ!」
魔将軍アビスが勝ち誇ったように笑っている。
私が空を飛べないから戦いようがないと思ってるのだろう。
だがこのスキルはそんなアビスの思っている程使えないものではない。
使い方次第では空飛ぶモンスターを一網打尽にすることも十分可能だ。
「周囲の地面を鋭い岩山にチェンジ! 一気にせり上がれっ!」
私のマップチェンジスキルは、周囲のマグマを一瞬で鋭い岩山にチェンジし、一気に隆起させた。
――GYAAAAAYAA-!!――
鋭く切り立った岩山は空を飛ぶモンスターを次々と百舌鳥のはやにえのように突き刺し、隆起した岩山にぶちあったモンスターは飛ぶ力を奪われて高い場所から数十匹まとめて転がり落ちた。
せり上がる岩山は次々とモンスターを呑み込み、巨大な墓標のようにそそり立っている。
初めてこの光景を見た人は、これが一分前にいきなり出現したものだとはとても考えられないだろう。
「な……何なのよ、このバケモノ……」
魔将軍にバケモノ呼ばわりされるとは。
まあ自慢のA級S級モンスターが次々に私のスキルで倒されているのであの驚愕ぶりは仕方ないだろう。
魔将軍アビスの用意した飛行型モンスターは一分も経たずに一気に全滅した。
それを確認した私は、再び地面を元の平地に戻した。
大量の飛行型モンスターの死体があちこちに散らばっている。
それを目の当たりにした魔将軍アビスは再び魔力を集めだした。
「よくもよくもやってくれわね! アタシちゃんの計画を全部ぶっ潰して、殺しても殺し足りないわ! ……そうね、これならアンタもオシマイよ! 今度こそ地獄に行きなさい!」
魔将軍アビスは大きく手を掲げると、またモンスターの大軍を呼び出した。
今度のモンスターは……幽鬼、ゴースト、と呼ばれる実体なき者達だ。
「いくらアンタのスキルでも実体の無い相手なら戦いようがないでしょ。今度こそオシマイよ。さあ、死になさぁい!」
私を殺すために魔将軍アビスの呼び出したモンスターは、剣や物理攻撃といったものが通らない奴ばかりだ。
だが運が無かったな。
今の私にはそれに対応する方法がある。
「目の前の地面を聖なる魔法陣にチェンジ!」
「‼ 何よそれぇっ!」
魔将軍アビスの呼び出した幽霊系モンスターが次々と消滅していく。
私、いやユカが以前邪竜ザッハークを倒した際に見つけた神殿の聖なる魔法陣、これの記憶があったのでそれをマップチェンジで作ったのだ。
「ギャアアア! 苦しいっ! 苦しいぃぃー‼」
聖なる魔法陣のエネルギーは魔将軍アビスに致命的なダメージを与えた。
「もうイヤ、アタシちゃんをいじめるやつがいるような場所なんてもういたくない! もう帰るからねっ!」
魔将軍アビスは涙目になりながらその場から姿を消した。
彼女がいなくなると、辺りを包んでいた紫の霧はその場から消え去り、次々と眠りについていた人達が起き上がった。
「ん……何だ」
「何だアレは⁉」
「凄い……たった一人であのモンスターを倒したというのか!」
目を覚ました人達が最初に見たものは、数万のモンスターの死体の中にたった一人立っているユカの姿だった。




